(※写真はイメージです/PIXTA)

睡眠時無呼吸症候群の驚きの死亡率上昇データ、閉経との関係…。専門医である馬車道木村耳鼻咽喉科クリニック院長・木村至信医師が、意外と知らないいびきに関する知識・改善策や治療法・治療費について解説します。

いびきを相談するのは恥ずかしい?

耳鼻咽喉科クリニックでしばしば相談を受ける、いびき。

 

老若男女、いびきは気になるようです。それはなぜか、自分では眠っているためコントロールができないからです。

 

いびきのせいで、起床後口の中が乾き、朝の口臭がきつくなったり虫歯が増えることがあります。眠りが浅く疲れが取れないため、日中眠くなり、仕事に集中できない。また、多くの場合はパートナーのいびきが気になることが多いので、別の部屋で寝ざるを得ないケースも多くあります。

 

仕事のできる魅力的な方でいるためには、いびきは必要のない要素だと思います。適切な治療を受けることで、いびきが改善する可能性は高くなります。ですが「いびきを耳鼻咽喉科に相談するのは恥ずかしい」と思う方も多いようです。

口閉じテープ、鼻腔拡張テープ。喉を切る手術…

人の羞恥心は、ビジネスになります。

 

医学的効果は疑問ですが、口が開かないよう止めるための「口閉じテープ」、鼻腔を広げて鼻通りをスッキリさせる「鼻腔拡張テープ」など、ありとあらゆるいびき防止グッズが販売され、クリニックでも「日帰り軟口蓋形成のレーザー治療」と名目した手術を、自費治療でやっているところもあります。

 

ちなみにこの手術は、現在では研修医時代に習うくらい簡単な、喉ちんこを切るだけの手技ですが、切りすぎると飲み物が逆流し鼻から出るようになってしまうため、保険適応ではあまりお勧めしません。しかしビジネスにはなっています。羞恥心はお金になるのです。

 

では、きちんとしたコスパの良い治療はないのでしょうか。その説明をする前に、まずはいびきの正体をご説明します。

睡眠時無呼吸症候群、死亡率約4倍のデータも

いびきとは、睡眠時の呼吸に伴う雑音のことです。睡眠中は喉の周りの筋肉が緩み、寝ると重力で舌の根元が下に落ちて気道が狭くなります。そこに空気が通ると、周囲の組織が振動していびきが起こります。

 

じつはいびきには2つの種類があります。

1.単純性いびき

鼻づまりや疲労、飲酒、風邪などが原因の一時的ないびきです。

 

鼻中隔彎曲症(鼻の真ん中の仕切りが曲がっている)、肥厚性鼻炎(鼻の粘膜の慢性的な炎症により、鼻の粘膜が厚くなって鼻腔内が狭い)、鼻茸(鼻の良性ポリープ)、アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎、習慣性扁桃炎、慢性咽頭炎、アデノイド肥大など…。これらの病気を治療することでいびきは改善します。しかし、放っておくと睡眠時無呼吸などの原因になることがあります。

2.睡眠時無呼吸を伴ういびき

常時いびきがあり、他人から指摘されるほどの騒音になります。放置しておくと睡眠時無呼吸は悪化し、様々な生活習慣病、重病を引き起こし、重症の睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome 以下SAS)では死亡率を約4倍に上昇させるというデータもあるほど、寿命にも関係するといわれています。さらに日中の強い眠気が、居眠り運転や労働災害にもつながります。

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