(※写真はイメージです/PIXTA)

老若男女問わず患者が多い「口内炎」。症状を放置するか、すぐに病院に行くかは人によってまちまち。しかし、口内炎にはときに重大な疾患が隠れているケースがあります。そのデッドラインとは―。これまで20年以上に渡り人々の口内を見続け、海外でも診療をしてきた馬車道木村耳鼻咽喉科クリニック院長・木村至信医師に解説いただきます。

世の中が不安定になると増えてくる病気

世の中が不安定になると増えてくる病気があります。その一つが「口内炎」です。若い方に多いのですが、老若男女問わず患者さんは耳鼻咽喉科にいらっしゃいます。自分で患部が見えたりすると余計に不安になるからか、初期の方も多いですし、どうしてこのまま放置したの? というほど進行してしまった方、「実は癌だった」という方もいらっしゃいます。かといって病院に行くと、時間もコストももったいないレベルの症状であると考えてしまう気持ちもわかります。そのデッドラインをお伝えいたします。

 

その前に、たかが口内炎、されど口内炎の病態を見てみましょう。

 

口内炎とは、その名の通り、口の中やその周辺の粘膜におこる炎症の総称です。主に頬の内側をはじめとする広い範囲に発生する炎症で、多くが痛みを伴います。単発、多発、長引く場合もあります。口は、食事や呼吸、会話などで外部に接する器官だけに、ほこりや細菌、ウイルスなどの影響を受けやすいため、その原因は多岐にわたっています。

 

私たちの口の中では、毎日1.5~2リットルの唾液が分泌されています。しかし、口の周りの筋力が衰えたり、唾液腺の分泌能力が低下したりすることで、20歳ごろから徐々にその量は低下していきます。唾液には、口の中を潤す働きのほかに、抗菌作用や口の中の粘膜を保護する働きもあります。加齢によって唾液が減り、口内炎ができやすくなったり、加齢に伴い口内の粘膜が再生されにくくなることで、炎症が治りにくくなったり、意外と厄介です。

 

口腔内の炎症だけでも以下の通り、様々な病気が考えられます。

 

  • アフタ性口内炎:一般的に白い円形状で、えぐれて痛みがある。

 

  • 口腔カンジダ症:舌の苔が厚く、また口内全体に白いコケが生え、粘膜が腫れる。

 

  • 白板症:こすっても取れない白い粘膜ができる。ビタミンA不足、喫煙などが原因で、悪性化しやすい。ニコチン型口内炎とも言われる。声帯の周りに起きると、喉頭癌予備軍の前癌状態と言われ、かなり注意が必要。

 

  • 扁平苔癬:白いレース状の形をした炎症。少数ががん化する。

 

  • ヘルペス性口内炎:発熱、だるさも伴う。口臭がきつくなることも特徴。

 

  • 手足口病:乳幼児が口が痛いと訴えたり、食べなくなったりしたらこれを疑う。自然に治る。

 

  • ヘルパンギーナ:熱や痛みを伴う咽頭部分にできる口内炎で、夏に流行する。

 

  • 舌、口腔底がん:しこりや出血を伴うが、初期症状は口内炎。

 

他にも、口内炎を伴う可能性のある病気としてベーチェット病、白血病、バセドウ病、大腸炎、糖尿病、天疱瘡、尿毒症などがあり、命の危険を伴うものが以外と多いのです。

 

私は20年以上耳鼻咽喉科の医師をしていて、口内炎から舌がん、白血病、バセドウ病、糖尿病、天疱瘡が発覚したという方は複数名診察してきました。珍しいですが、なくはないといった印象です。

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