使い込みをした人への請求方法
花子さんの通帳の履歴を確認していた次郎さんが、多額の出金を発見し、一郎さんに使い込んだ分について取り戻したいと考えた場合は、どのような手続きをとるべきでしょうか?
まずは当事者間の交渉で解決を試みます。しかしながら、使い込みについては、請求する側、請求される側、それぞれに言い分があることが多く、話し合いではなかなか解決に至らないことが多いです。交渉での解決が困難な場合、民事訴訟にて解決を試みます。相続財産の使い込みは、家庭裁判所で審理される遺産分割調停・審判とは別に、民事訴訟にて不当利得返還請求や不法行為に基づく損害賠償請求を提起することになります。
花子さんのケース
亡くなる1年間に引き出された2,500万円のうち、使い込まれた2,000万円について、次郎さんが一郎さんから取り戻したいと主張する場合
2,000万円(使い込んだ分)×1/2(法定相続分)=1,000万円
が、請求額となります。
生前の使い込みについては、花子さんが一郎さんに対し、返還するように求める請求権を有しているので、次郎さんが、その請求権を相続したとして、一郎さんに請求することになります。そのため、裁判等行う場合に、使い込みがなされた金額としては、2,000万円を主張しますが、次郎さんが実際に請求するのは、法定相続分に該当する1,000万円分となります(花子さんが遺言書を作成している場合は、遺言書に従った相続分を請求することになります)。
使い込みの訴訟では、下記3点が争点となります。
・誰が預貯金を引き出したか
・引き出した人に引き出す権限があったか
・引き出した金銭の使途
まとめ
以上のとおり、使い込みを取り戻す場合は、多くが民事訴訟で争うこととなります。民事訴訟では、客観的な証拠をもとに、主張を組み立てていく必要があり、一般の方には手続きが非常に難しいです。そのため、被相続人の財産の使い込みを発見した場合は、なるべく早く弁護士に相談をして、証拠の収集や訴訟の見通しについてアドバイスをもらうようにしましょう。
相続が発生して、他の相続人による被相続人の預貯金の使い込みが発覚した場合、その使い込みに関する証拠をしっかりと収集するようにしましょう。使い込みについては、話合いでの解決は難しいことが多いです。そのため、早めに弁護士に相談をして、使い込みについてもしっかりと請求ができるように準備をするとよいでしょう。
堅田 勇気
Authense法律事務所
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