人生100年時代、いまは健康な人でも将来はわかりません。万一の病気に備えて「医療保険」に加入している人も、加入を検討している人も多いと思いますが、実際の費用対効果の面ではどうでしょうか。公認会計士・税理士の岸田康雄氏がアドバイスします。

保険会社が勧める「がん保険」とは?

万が一に備えたい人が加入する「生命保険」。最近は「外貨建ての生命保険は手数料が高く、円高による元本割れのリスクがある」といった注意点も周知されてきました。大切な家族のため、本当に必要な金額を理解して、適切な保険を選ぶことが大切です。

 

ある若い夫婦は生命の加入を検討した際、普段から資産形成の相談に乗ってもらっている公認会計士のK先生から「生命保険は死亡保障1,000万円の掛け捨てで十分」とのアドバイスをもらいました。しかし、次に悩んでいるのが医療保険です。

 

夫:いまはまだ若くて健康ですが、これから先、万一病気になったとき、医療費にかかるお金が不安です。

 

保険会社:ご存知かしら? 日本人の2人に1人はがんの治療を受けているの。そして、3人に1人はがんで亡くなっているの。最先端医療を使うと何千万円と費用がかかるのよ。

 

夫:ええっ、そんなに!?

 

保険会社:そうよ。あなたのご家族にご負担をかけないよう、医療保険に入っておくべきだわ。がん治療特約と先進医療特約をつけておけば、安心ですわよ。

 

妻:人生には不安がたくさんありますね! すぐに家族で相談します!

民間保険・がん保険の必要性を考えよう

夫:K先生、将来の病気に備えて医療費を貯めようと思います。

 

妻:がん保険はどうでしょうか?

 

K先生:君たちは会社員だから、健康保険に加入しているよね? それが君たちにできる最強の装備なんだよ。民間の医療保険なんて必要ないね。

「傷病手当」と「高額医療費」で費用面はカバーできる

夫:ちょっと待ってください! 健康保険には3割の自己負担がありますよね? それに差額ベッド代も心配です…。

 

K先生:そうだね。でも「傷病手当」と「高額療養費」の制度で、ほとんどの費用はカバーできるから、心配する必要はないんだよ。

 

夫:なんですか、それは?

 

K先生:傷病手当金は、ケガや病気で仕事ができなくなったとき、いまの給料の3分の2の金額が、1年6ヵ月間支給されるものなんだ。

 

妻:それは助かりますね!

 

K先生:そして、高額療養費制度というのは、医療費の自己負担額が上限を超えたら、それ以上は健康保険組合が支払ってくれる制度なんだ。君たちの月収ならば、上限は9万円くらいと考えればいい。

 

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がん保険は不要!…割に合わない「3つの理由」

夫:でも日本人の2人に1人はがんになるんですよ? 50%の確率です。なにか準備しないと!

 

K先生:そうだね、準備は必要だね。でも、公認会計士の私がはっきりいえるのは「がん保険は止めたほうがいい」ということだ。

 

理由①保険では高い確率で発生するできごとには備えられない

夫:えっ! なぜですか?

 

K先生:50%といった高い確率で発生するできごとに、保険は向いていないんだよ。交通事故を考えてみよう。ドライバーが死亡事故を起す確率はとても低いよね。仮に0.1%だと考えてみようか。でも、事故を起こすと賠償金は1億円とか大きな金額になってしまう。それが恐いから、ドライバー全員が自動車保険に入っているわけだ。

 

妻:そうですね。万が一の事故がこわいですから。

 

K先生:これが保険の仕組みなんだよ。つまり、めったに起こらないけれども、起こったときに大きな損害が発生する事態に備える仕組みが、保険なんだ。確率0.1%で1,000人に1人が事故を起こすとしても、ドライバー全員が10万円ずつ保険料を支払っていれば、事故を起こした人に1億円を支払うことができるね。

 

妻:事故を起こしたドライバーは、10万円支払うだけで1億円もらえる計算ですね。

 

理由②払い戻しされる金額が少なくなってしまう

K先生:それが、がんみたいに確率50%だとね、2人に1人ががんになる。その場合、私たちが保険料を100万円支払ったとすると、がんになったときの保険金は200万円しかもらえない。

 

夫:えーっ! 保険金が少なすぎですよ!

 

K先生:逆に、がんになったときの保険金を2,000万円支払おうとすると、私たちの保険料は1,000万円になってしまう。

 

妻:えー、保険料が高すぎますね!

 

理由③手数料が高くて十分な備えにならない

K先生:そして、ここが重要なポイント。実際には、保険会社が手数料を4割くらい取ってしまうから、6割くらいしか保険金として払い戻されないんだよ。

 

夫:手数料が4割ですか!? ボッタクリですね! それならがんになった人は、100万円支払っても120万円しかもらえない計算ですね。

 

K先生:もちろん、がんにならなかった人は、1円ももらえない。がん保険の払い戻しが6割というとだね、競馬でも払い戻しが7割くらいあるから、ぜんぜん儲からないギャンブルだといえるだろうな。

 

★医療保険は勝率が低い!?詳細はこちらをチェック!

【がん保険】は競馬より勝率が低い医療保険に加入するべきか?【第8話】

 

病気にも、iDeCoやNISAで備えよう…保険はNG!

妻:では、私たちはどうやって準備すればいいのでしょうか?

 

K先生:それはもう教えただろう? インデックス・ファンドで運用することだよ。がん保険で保険料を支払うくらいなら、そのお金でiDeCoや積み立てNISAを始めるほうがいいよ。

 

夫婦:そうでしたね!

 

 

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

 

★高校生から知っておきたいライフプランニングと家計管理はこちらをチェック

【家庭科/資産形成】ライフプランニングと家計管理【第2話】

 

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