iDeCo+つみたてNISAは将来のお金、現在のお金は…
資産形成に頭を悩ませる若い夫婦に、公認会計士のK先生は「iDeCo+つみたてNISA」で毎月3万円ずつ貯め続ければ、老後資金2,000万円はクリアできると教えてくれました。しかし、2,000万円まで増えるのは30年後の話です。それまでに必要なお金はどうすればよいでしょうか?
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【積立てNISA】で老後資金を節税しながら貯める方法【第6話】
保険会社が勧める「外貨建ての貯蓄型保険」
保険会社:ちょっとアナタ! 結婚したらね、もう1人じゃないのよ。あなたに万一のことがあったら、残された奥さんとお子さんがタイヘン苦労することになるのよ、わかってる? 子ども1人を大学卒業まで育てると3,000万円もかかるんだから。奥さん1人では無理! でもね、生命保険に入っていたら安心よ! 保険は「家族に対する思いやり」「奥様に対する愛」なのよ!!
夫:確かに、そうですね。僕が家族を守らなければ…。オススメの商品はどれでしょう?
保険会社:いま大人気の商品があるの!「ドル建ての貯蓄型保険」よ。支払った保険料の110%が(ドル建てで)20年後に返ってくるの、お得でしょう?
夫:生命保険と貯蓄を両立できますね! 家族と相談してみます!
生命保険の営業は「獲物を待つオオカミ」のごとく…!?
夫:K先生、先日、生命保険の無料相談に行ってきました。家族を守るために生命保険に入ろうかと思うのですが、どんな商品がおすすめでしょうか?
K先生:生命保険会社の人に相談したのかい? それは、おばあさんのフリをしたオオカミに相談する赤ずきんちゃんだね。
夫婦:えーっ、またそのパターンですか!
死亡保障の必要性とは…「自分に最適な保険」を選ぶ
K先生:ここは生命保険についてしっかりと教えてあげよう。「死亡保障」がどんなときに必要か、わかるかな?
夫:死亡保障ってなんですか?
K先生:君が死んだときに生命保険会社から支払われるお金のことだよ。
夫:私が死んだ後の子どもの生活費ですよね。
K先生:そうだね。若い方で十分な貯蓄がなかったり、頼りにできる親族がいなかったりすると、残された子どもの生活が苦しくなるよね。そんな場合に「死亡保障」が必要になるんだ。
遺族年金があれば、多額の死亡保障は必要なし!
夫:子ども1人を育てようとすると3,000万円の死亡保障が必要だと聞きました…。
K先生:いや、そんなに必要ない。奥さんが働いて稼ぐお金と、君がすでに貯めていたお金、それに奥さんがもらう遺族年金が、将来の生活費に使えるわけだ。それでも足らない金額だけが死亡保障として必要なんだよ。
妻:遺族年金って何ですか?
K先生:夫が死亡したときに、子どもがいる奥さんへ支給されるお金だね。子どもが成人になるまで年間150万円くらいかな。
夫:それは助かりますね。3,000万円なくても大丈夫かもしれません。
K先生:そうなんだ。死亡保障は子ども1人につき1,000万円くらいで十分だと考えておけばいいよ。
死亡保障なら「掛け捨ての定期保険」で十分!
夫:そうなんですね。1,000万円の死亡保障を付けてもらうのに、どんな商品がよいのでしょうか?
K先生:それは「掛け捨ての定期保険」だ。保険料は掛け捨てになるけど、一定期間の死亡保障を付けてもらえるんだ。20年間で1,000万円の死亡保障だと、毎月の保険料は1,500円くらいかな。
貯蓄型の保険が「絶対NG」だといえる2つの理由
夫:えーっ、掛け捨てはもったいないですよ! 無料相談では、支払った保険料の110%が20年後に戻ってくる、ドル建ての貯蓄型保険を勧められたのですが、どうでしょうか?
K先生:絶対にダメですね! これも史上最低の商品です。手数料の高いボッタクリ商品ですよ。
夫婦:えーっ!? またそのパターンですか? なにが悪いのですか?
理由①元本割れリスク…外貨は資産として不安定
K先生:110%が戻っているといっても、ドル建てでの話でしょう。将来の為替レートが円高になっていたら、元本割れする可能性もありますよ。
妻:確かに、保険金はドルではなく円で受け取りますから、円高が心配ですね。
K先生:もし円高にならないとしても、そのような商品だと、利回りはせいぜい年1%くらいだろうね。アメリカの国債を買っても利回り2%くらいあるから、ドル建ての運用で1%は低すぎて論外だよ。
理由②仕組みが複雑で分かりにくい…その結果、手数料も高くなる
夫:でも、死亡保障と貯蓄がセットになっているのって、よくないですか?
K先生:生命保険で貯蓄しようなんて考えることが大きな間違い。支払った保険料が戻ってくるということは、生命保険会社が預かったお金を運用しているわけだよね。どうやって運用していると思う?
妻:株式や債券ですよね?
K先生:ファンド・ラップとほとんど同じなんだよ。
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掛け捨て定期保険と外貨建て貯蓄型保険のリスクと手数料の違いとは?【第7話】
夫婦:えーっ! また「手数料が高い」っていう話ですか!?
K先生:ファンド・ラップは、残高から手数料が毎年2%くらい取られていくと話したけど、覚えているかな? 生命保険はもっと高いんだよ。ファンド・ラップみたいに残高から取られるわけではないけど、毎回支払う保険料の3割から4割くらいが手数料として差し引かれていると考えればいい。
夫婦:ええーっ、iDeCoやNISAと全然違うじゃないですかー!!
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人生100年時代「老後資金」はどうする?老後の生活費、老後資金の貯蓄と運用、医療保険について
岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士
岸田康雄氏 登壇セミナー>>1/7開催
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