(※写真はイメージです/PIXTA)

癌治療でも外科でも、救急の現場でも美容分野でも、「医療の名の下の犠牲」が発生する構造が、残念ながら日本の医療にも存在する。これらは何故発生し、どう事前に防げるのか。「美容医療国際職人集団」と言われるJSAS会員であり、高須克弥医師の孫弟子にもあたる医療法人美来会理事長、九野広夫医師に解説いただく。氏は、美容医療の他院修正専門医院を立ち上げ、不幸な医療事故や医療過誤を数多く目にしてきたその道のスペシャリストである。

前額への異物挿入は顔面神経を損傷するリスクも

また、前額(またはコメカミ)リフトや前額(またはコメカミ)にシリコンプロテーゼ・ゴアテックス等を挿入する術式も高い危険性を孕んでいます。脱毛に加えて三叉神経前頭枝損傷による知覚障害や、眉が挙上できなくなる等の顔面神経を損傷するリスクを常に有しているだけでなく、眉が挙上したまま(常にビックリしたような表情に)固定されてしまうケースも散見されます。

 

数年~10数年後に異物周囲の陥没が進行し異物が浮き出てくることが多く、その際にもっと大きな異物への置換手術を勧められることがしばしば見受けられます。するとますます、先に述べたリスクの種類や程度は増大の一途を辿ります。

 

つまり、全切開を伴う上眼瞼手術や眉上・眉下切開、前額リフト術式、異物を用いた手術等では利点がかなり限られているのに対して、そのリスクやデメリットは全く釣り合いが取れないほど甚大であると言えるのです。

他院 前額異物挿入手術の医原的合併症の治療 症例

症例:57歳女性 左眉下・右眉上切開創より前額のシリコンプロテーゼ挿入後から32年以上右眉が挙上できなくなった症例

 

他院手術歴:1986年25歳時 東京の形成外科開業医院にて額にプロテーゼ挿入。顎先にもプロテーゼを挿入していた時期もあるが、既に抜去されていた。2000年39歳時に顎下吸引、顎にヒアルロン酸注入(1回)。

 

方法:額プロテーゼ抜去&凹凸修正

 

リスク・合併症:内出血・炎症(発赤・熱感・腫脹)・線維化等、ごく稀に感染・後戻り・麻酔アレルギー等

Dr.コメント:この方の前額に挿入されていた(凹凸が顕著になっていた)シリコンを抜去する際、右眉下の瘢痕を利用して最短経路でアプローチして抜去しましたが、すでにシリコン周囲には高度な線維化と石灰化が見られ、シリコンそのものは劣化して砕かれていました。

 

患者さまご本人も右の眉が充分挙上できない(※中央の写真)ことに気づいていましたが、眉付近の切開や異物挿入によって不可逆的障害が生じ得ることが判る症例です。

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