(※画像はイメージです/PIXTA)

労働者50人以上であれば義務化されているストレスチェック。増加の一途を辿っていた精神障害による労災認定件数に対する危機感から導入されたものですが、従業員からは「ただやっているだけ」「何にも活かされていない」という声も。厚生労働省の資料から、実施状況をみていきます。

「精神障害による労災認定件数」は減っているのか?

メンタルヘルス不調の未然防止を目的に義務化されたストレスチェック。その結果を4割は活かしきれていませんが、従業員のメンタル不調の状況はどのようになっているのでしょうか。前出厚労省の調査によると、過去1年間(2020年11月1日~2021年10月31日)にメンタルヘルス不調を理由に連続1ヵ月以上の休業した労働者、または退職者がいた事業所は、全体の9.2%。

 

*厚生労働省の指針によると「精神および行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むもの」

 

事業所規模でみていくと、1,000人以上企業で90.3%、500~1,000人未満企業で84.0%、300~500人未満企業で66.9%、100~300人未満企業で39.3%、50~100人未満企業で43.8%。産業別にみていくと、「情報通信業」が最も多く25.7%。ほか「電気・ガス・熱供給・水道業 」「複合サービス事業」が20%を超えています。また全労働者に対して連続1ヵ月以上休業した労働者の割合が高いのは「情報通信業」で0.9%。100人に1人という水準です。

 

また厚生労働省『令和3年度 過労死等の労災補償状況」で精神障害による労災補償状況をみていくと、2021年度は2,346件の請求があり、そのうち1,953件が決定、うち629件と32.2%が支給決定となりました。過去5年の推移をみていくと、明らかに増加傾向にあり、ストレスチェックの義務化が精神障害による労災認定件数の減少を目論んだものだとすると、目的はまったく達成されていないといえます。一方、自殺に限ると2021年は前年コロナ禍1年目からの反動があったものの、減少傾向にあります。これを制度義務化の成果だという専門家もいます。

 

ただ義務化により「単にやらないといけない」で終わっている企業が多く、形骸化の懸念があるのは確かです。

 

【精神障害の労災補償状況】

2017年:1,732件(221件)/1,545件(208件)/506件(98件)

2018年:1,820件(200件)/1,461件(199件)/465件(76件)

2019年:2,060件(202件)/1,586件(185件)/509件(88件)

2020年:2,051件(155件)/1,906件(179件)/608件(81件)

2021年:2,346件(171件)/1,953件(167件)/629件(79件)

 

出所:厚生労働省『令和3年度 過労死等の労災補償状況」

※数値左より、請求件数、決定件数、決定のうち支給決定件数、(かっこ)内は自殺のそれぞれの件数

 

従業員の健康への投資は法律で義務付けられているものの、休職者や離職率の低下、モチベーションや生産性の向上、企業価値の向上、人材採用力の強化など、企業経営においてさまざまなメリットを与えてくれます。セルフチェックを実施する以上は、経営にプラスになるよう活用するのがベストだといえるでしょう。

 

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