10月11日からは1日の入国者数上限が撤廃され、昨今の円安の影響もあり約2年半ぶりに海外観光客が押し寄せそうです。外国人だけではなく日本人の検疫もスムーズになり、旅行ブームに火が付く予感がします。この環境の下、先行する世界の投資家からは、航空機への投資が再び脚光を浴びています。コロナ禍後のインフラ投資戦略として、なぜ航空機が有望視されているのか、航空業界ではいったい何が起きているのか──本連載では、そんな「航空機投資」の魅力をプロが徹底解説します。第4回目となる本稿では、「代表的な航空機エアバスA320–200の価格推移を例」に、「航空機の中古市場」について解説します。
代表的航空機・エアバスA320-200 中古機価格の推移
図表1は、大手エアラインだけでなくLCCにおいても数多く運航される代表的な航空機、エアバスA320–200の機体価値を機体年齢(「機齢」や「ビンテージ」と呼ぶ)別に過去25年間の推移をグラフ化したものです。
下図では、太く濃い線が機齢別の機体価値を表していますが、製造から10年間は毎年5%程度価格が下がっていき、その後4%、3%と徐々に緩やかに価格が推移している様子がわかります(最終的にはエンジン2基分の価値に収束します)。細く薄い線は各製造年別の平均機体価値の推移ですが、興味深いことに平均機体価値の±500万米ドル程度(5億円程度)の枠に収まっていることがわかります。
過去25年の間には経済危機やリスクイベントが幾度か発生しましたが、この航空機(エアバスA320–200)の中古市場は暴落といえるほどの価格変動は起きていませんし、ある機齢を超えた途端に急激に価値が下落するような様子もありません。
さまざまな外部要因により一時的に市場価値が下がった場合でも数年(1~3年)で平均価値に向かって回復していく弾力性を確認できるかと思います。コロナ発生から既に2年以上経過していますが、やはり同様の傾向にあると言えます。
ここではエアバスA320–200という代表的な航空機を例に中古市場の動きを見ましたが、もちろん機種によってその特性は大きく異なりますのでイメージとして捉えて頂ければと考えています。
値動きが大きなものもあれば、逆にこれから上がるものもあるかもしれませんが、重要なことは投資目的や目標とするリスク・リターンに合致した機種を選択することです。
航空機の機種ごとの特性や使用されているテクノロジー、需給環境にバックオーダー等、多くのことを考慮して取得する機種を選定し、投資戦略を立てることこそが航空機投資の一丁目一番地ですが、その戦略設計は資産クラスとしての航空機の大きな特徴の一つである価格安定性を生かすべきです。
株式会社マーキュリアインベストメント
航空機投資戦略リーダー
外資系コンサルティング会社を経て、2008年あおぞら銀行に入社。同行では投資銀行部門に配属、入社以来、航空機や船舶ファイナンスを中心とするストラクチャードファイナンス業務に従事。香港現地法人にてアジア太平洋地域をカバーする航空機ファイナンスチームを立ち上げ、欧米金融機関と協働し、航空機リース会社等に対して数多くの融資を実施。2019年より株式会社マーキュリアインベストメントに参画。一般社団法人航空機投資研究会代表理事。南カリフォルニア大学経営学部卒。
株式会社マーキュリアインベストメント(http://www.mercuria.jp/)
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連載〈無敵のグローバル資産〉一流の個人投資家たちが注目する「航空機投資」の魅力を徹底解説!
旭アビエーション株式会社 代表取締役社長
伊藤忠商事に1989年に入社。宇宙航空機部を経て、航空機オペレーショングリース子会社である米国伊藤忠エアリーズにてジェネラルマネージャーに就任。2002年に三菱商事に入社し、米国での航空機リース会社立ち上げに従事。ジェネラルマネージャーとして発展を主導、2社で合計約180機の航空機のリースおよび売却の経験を持つ。2017年に旭アビエーションを設立、グローバルに航空機リースマネジメント、仲介、テクニカル/コマーシャル・コンサルティングサービスを提供している。
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