(※画像はイメージです/PIXTA)

NHKは、2022年10月11日に公表した「放送受信規約(素案)」において、受信料の不払いについて、割増金を2倍にする方針を明らかにしました。受信料の強制の是非については、最高裁判所の2017年の判例があります。判例の論理を改めて確認するとともに、その妥当性について検証します。

最高裁の判例のロジックとは?

まず、NHKの受信料の強制徴収の制度(放送法64条1項)の合憲性に関する最高裁の判例(最判平成29年(2017年)12月6日)の論理構成を確認しておきましょう。おおむね以下の通りです。

 

・放送は国民の知る権利(憲法21条)を充足し、健全な民主主義の発達に寄与するものとして、国民に広く普及されるべきものである。

・放送の不偏不党、真実及び自律を保障することにより、放送による表現の自由を確保する必要がある。

・そのために、「公共放送」と「民放」が互いに啓蒙しあい、欠点を補いあうことができるように、二本立ての体制がとられている。

・NHKは「公共放送」であり、国家権力や、広告主等のスポンサーの意向に左右されず、民主的かつ多元的な基盤に基づきつつ自律的に運営される事業体として性格づけられている。

・したがって、放送法は、NHKが営利目的として業務を行うことや、スポンサー広告の放送をすることを禁じており(放送法20条4項、83条1項)、その代わりに、財源確保の手段として、受信料の制度が設けられている。

・受信料の金額については毎事業年度の国会の承認を受けなければならず、受信契約の条項についても総務大臣の認可・電波監理審議会への諮問を経なければならないなど、内容の適正性・公平性が担保されているので、そのような受信契約を強制することは目的のため必要かつ合理的である。

 

これらの要旨からすると、受信料の強制徴収を合憲とする最大の論拠は、NHKという公共放送局の公共性、非営利性、独立性、公正性といった特殊な位置づけにあります。

 

現行の強制徴収の制度はそれらを実現することを目的としているものであり、その目的には正当性が認められるということです。

 

かつ、放送受信規約の内容については国会の承認、総務大臣の認可といった民主的コントロールを受けており、内容の適正性・公平性が担保されているため、上記目的達成のため必要かつ合理的な制度だとしているのです。

 

すなわち、最高裁判所は、受信規約の内容の当否にはほとんど踏み込んでいないのです。これは、立法府である国会や、行政府である総務省の裁量を尊重する態度のあらわれです。

 

どういうことかというと、国会は、国民による直接選挙において選出された国会議員により構成されています。また、総務省は国会により選出された内閣総理大臣が任命する総務大臣が統括しています。

 

これに対し、裁判所は「三権」のなかで唯一、民主的な基盤がありません。したがって、裁判所は国会や総務省の「裁量」を基本的に尊重せざるをえないという考え方が背後にあるのです。

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