(※画像はイメージです/PIXTA)

連鎖販売取引(マルチ商法)で国内最大手の日本アムウェイ合同会社が、消費者庁から、6ヵ月間業務停止の行政処分を受けました。マッチングアプリを介して行った勧誘が「特定商取引法違反」の行為に違反するというものです。本記事では、アムウェイをはじめとして古くからトラブルがあとを絶たない「連鎖販売取引」のしくみと問題点について、関連法令にも触れながら解説します。

アムウェイ等で問題の「連鎖販売取引」とは

消費者庁は、連鎖販売取引を以下のように定義しています。

 

「人を販売員として勧誘し、更にその個人に次の販売員の勧誘をさせるという形で、販売組織を連鎖的に拡大して行う商品(権利)・役務の取引」

消費者庁HPより

 

 

たとえば、AさんがBさんを販売員として勧誘し、さらに、BさんがCさんを販売員として勧誘する、ということを連鎖的に繰り返していくものです。

 

ポイントは、その過程で「特定利益」と「特定負担」を伴うことです。

 

「特定利益」とは、他の人を勧誘して商品を販売すると紹介料等が得られることをさします。AさんがBさんを勧誘したらAさんに紹介料が入り、BさんがCさんを勧誘したらAさんとBさんに紹介料が入るというしくみです。

 

また、「特定負担」とは、取引を行うための条件として「入会金」、「保証金」、「サンプル商品」、「商品」など、なんらかの金銭負担を行うことが条件となっていることをさします。

 

AさんがBさんを勧誘して商品を販売するには、Aさんはお金を払って商品を仕入れなければなりません。また、BさんがCさんを勧誘して商品を販売する場合も同様です。これが「特定負担」です。

連鎖販売取引に対する法規制はどうなっているか

連鎖販売取引に対しては、特定商取引法により非常に厳しい規制が設けられています。なぜかというと、後述しますが、その性質上、強引な勧誘等が行われやすいからです。

 

たとえば、勧誘を行う場合は、以下の行為が禁じられています。

 

・商品の品質・性能、特定利益、特定負担、契約解除の条件、そのほかの重要事項等について事実を告げないこと、あるいは事実と違うことを告げること

・相手方を威迫して困惑させること

・勧誘目的を告げずに誘った消費者に対して、公衆の出入りする場所以外の場所で勧誘を行うこと

 

つまり、勧誘をする際は、原則として、勧誘しようとする相手に対し、連鎖販売取引の勧誘であることを明示しなければなりません。また、「だまし討ち」や、相手が逃げられない状態を作り出すことも禁止されています。

 

今回の事件で問題となったのは、マッチングアプリを利用して、アムウェイの勧誘であることを告げずに勧誘を行ったことです。

 

特定商取引法には、この他に、一度断られたら二度と勧誘してはならないことや、契約時の書面交付義務や、クーリングオフ制度や、中途解約・返品等のルールが設けられています。

 

なお、日本アムウェイも、公式HPYouTubeチャンネルで強引な勧誘を戒めており、販売行為にありがちな「ノルマ」や「在庫の抱え込み」を明確に否定しています。また、「法令順守」を強調し、特定商取引法の規制について説明を行っています。かつ、もしも強引な勧誘等があった場合には通報するよう呼び掛けてさえいます。

 

また、今回の取引停止処分についても、公式HPでのコメントを見ると、「一部会員の違法行為」と記載しており、あくまでも組織的なものではないことを強調するニュアンスがみられます。なお、アムウェイの名前の由来は「American Way」ですが、文字通りアメリカ流の自己責任を強調しているともいえます。

 

しかし、法令を遵守していることと、その事業に問題があるかどうかということは、まったく別の議論です。

 

アムウェイをはじめとする連鎖販売取引業者については、古くから勧誘方法等をめぐってトラブルが絶えません。アムウェイが会社として法令を遵守しているとすると、そもそも法令順守以前に、連鎖販売取引というビジネスモデル自体に問題があるのではないかという疑問が生じます。

 

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