先の見えない将来不安・老後不安から、熱心に資産形成を目指す人が増えています。しかし、超低金利の上にインフレが進行している今の日本では、預金にしておくだけではリスクがあるため、適切な運用が求められます。ところが、運用にあたって人任せの姿勢をとってしまうと、大きな損失につながりかねないため、要注意です。公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

夫婦の状況~預金を十分に貯めて資産運用を検討中~

とある若い夫婦は、結婚してから数回目のボーナス日を迎え、いよいよ2人の貯金も300万円を達成しました。

 

夫:頑張ったね! 僕の預金も1,000万円あるし、そろそろマイホームを買っちゃおうか?

 

妻:そうね! でも、それよりまずは〈資産運用〉を始めてみない?

「お金のプロといえば、やっぱり銀行員では?」

2人はまず、相談先として銀行を選びました。

 

夫婦:老後資金2,000万円問題も心配ですし、いまから資産運用を始めようと思うんです。でも、資産運用はリスクがあるため難しいと聞いています。「お金の初心者」にピッタリの方法はありますか?

 

銀行員:ようこそいらっしゃいました! いまは公的年金もあてになりませんよね? ご心配、よくわかります…。老後の資金はご自身で貯蓄しなければいけませんから、まずは「個人年金」はいかがでしょうか。

 

夫婦:個人年金ですか?

 

銀行員:そうです。定期預金よりもダンゼン金利の高い「外貨建て」がお勧めです! 「オーストラリアドル建ての個人年金」はいかがでしょうか!?

 

夫婦:外国のお金ですか? 元本割れしませんか…?

 

銀行員:大丈夫です(キリッ)。「オーストラリア建てでの元本」を下回ることはありませんので、安心してください!

 

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「よくわからないから、証券会社にも相談してみよう」

銀行員の話にいまひとつピンとこなかった2人は、ほかにも相談してみようと、証券会社にも足を運びました。

 

夫婦:資産運用のこと、よくわからなくて…。「お金の初心者」にピッタリの方法はありますか?

 

証券会社:それなら、資産運用の専門家に任せてみましょう。「ラップ口座」はいかがでしょうか? 小口で開設できる「ファンド・ラップ」が大人気なんですよ!

 

夫婦:ファンド・ラップ…ですか?

 

証券会社:そうです! お客様が取ることのできるリスクの大きさに応じて投資方針を決め、あとは当社の優秀なファンドマネージャーにお任せください。ご自身で銘柄を選んだり、売買したりする手間は不要です。とってもラクですよ!!

「銀行と証券会社、意見が違って迷っちゃう…」

夫:うーん、銀行の人と証券会社の人のお勧め商品、違っていたなぁ…。

 

妻:結局、資産運用ってどうすればいいのかしら…?

 

迷った2人は、お金の専門家、K先生を訪ねました。

 

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資産運用にはリスク許容度に応じた我慢が必要!【第2話】

「どちらも話にならない、まったくもって論外だね」

K先生:なるほど~。「外貨建て個人年金」と「ファンド・ラップ」とはまた、上手なセールスだね!

 

夫婦:先生、一体どちらで運用すればいいんですか?

 

K先生:どちらで運用するか、だって? っていうか、どっちも話にならないよ。まったくもって論外だね!

 

夫婦:ええっ! どういうことですか!?

 

K先生:金融商品はだれが買っても同じだよ? 同じものを買えば、だれでも同じように儲かる。初心者とベテラン、若者と高齢者、大金持ちと一般人、みんな同じなんだ。

 

夫婦:いわれてみれば、確かにそうですね…。

 

K先生:だから「初心者向けの金融商品」なんて存在してないんだよ。それに、金融機関の相談窓口で〈私は初心者なのですが〉とかいっちゃうなんて、まるで赤ずきんちゃんが狼に人生相談してるみたいなもんだね!

 

夫婦:でも…。窓口の人、とっても親切に相談に乗ってくれましたよ?

 

K先生:ちょっと待ちなさい。売っている人の立場で考えてみなさいよ。銀行や証券会社は、金融商品を売って手数料を稼いでいるわけだよね? 彼らが儲かる商品を売りつけよう上手に説明するのは当然じゃないか。彼らはニコニコしながら「カモがネギ背負ってやってきた」と思っているよ。

 

夫婦:でも、相談した人は〈ファイナンシャル・プランナー〉の資格も持ってるし、信頼できそうな、人当たりのいい人でしたよ?

 

K先生:ファイナンシャル・プランナーに相談するのはいいけれど、彼らは「資産運用のプロ」ではなくて、「金融商品のセールスのプロ」なんだよ。実際には〈お客様からどれだけたくさんお金を稼いでやるか〉しか考えていないんだよ。

 

夫婦:ええっ! そうなんですか!?

 

K先生:商品を売る人の話なんて信用してはいけない。自分で資産運用を行うために、お金の知識を勉強しよう!

 

夫婦:では、どうやって資産運用すればいいんですか?

 

K先生:それなら、お金のプロである「公認会計士」の私が指導してあげよう! 私を信じて、指示に従っていればすべて安心!

 

夫婦:さすが先生! 頼りになるぅ!

 

K先生:こらこら。そうやってすぐ信じてしまうところが要注意なんですよ。まさかそんなこと、いうわけないじゃないですか。自分でしっかりと「お金の知識」を勉強して、理解することが大事なんですよ!

 

夫婦:はぁー、勉強ですか…。

 

 

K先生のレクチャーのまとめ

 

①そもそも「初心者向けの金融商品」など存在しない

②金融機関でわざわざ「初心者」と断って相談するなど愚の骨頂

③相談相手の肩書に惑わされてはならない

④人を当てにしてはダメ、自分で勉強することが大切

 

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ファンドラップと外貨建年金保険を銀行・証券会社から買う人の悲劇【第1話】

 

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

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