ゆるキャラや、B級グルメの盛り上がりは一時的…サスティナブルな地域復興がかなわない、地方中小企業の悲哀

ゆるキャラや、B級グルメの盛り上がりは一時的…サスティナブルな地域復興がかなわない、地方中小企業の悲哀
(※画像はイメージです/PIXTA)

日本の中小企業の倒産件数は2016年以降、毎年4万件を超えています。中小企業が時代の変化に適応し存続していくには、大企業の下請けから脱却し、主体的に地域創生に介入していくことが大切です。少子高齢化に人口流出…。地方が抱える課題にこそビジネスチャンスが埋もれていると指摘する、「宮崎中小企業大賞」を受賞した島原俊英氏が、著書でポイントを解説します。

 

新たな施策であるIT企業誘致、ご当地キャラ等の盲点

昨今は業界や業種を問わずあらゆる組織でDXが推進され、IT化やデータ活用が進む一方、システムエンジニアやプログラマーは人手不足が顕著です。また都市部に集まって仕事をする必要もないということから、IT関連企業も比較的人件費の安い地方都市への進出に意欲を示しています。

 

進出企業の規模や地元の経済への波及効果も大規模工場に比べれば小さいとはいえ新たな雇用を生み、特に就業時間などについて自由度の高い職場を求める人たちの勤務先として有望であることから行政も誘致に積極的です。

 

実際に地方都市で新たに100人、200人規模のオフィスを設けたり、数百人規模のコールセンターを開設したIT企業もあります。

 

しかしITは日進月歩です。プログラミングの世界ではこれまで必要とされていたコーディング作業を不要とするシステム開発手法が普及し始めるなど、IT分野の仕事が3年後、5年後にどうなっているかは誰にも予想がつきません。

 

また人件費以外に地域固有の資源を必須とする業界でもないため、地域の発展にとって持続可能なパートナーであるとは考えにくい存在です。

 

地域の魅力を押し出そうとするご当地キャラ開発やコンテスト、B級グルメ対決などのイベントも一時の話題にはなりましたが、地方経済に継続的に力強さをもたらすことはできていません。もともと地域発で盛り上がっていったものというよりは中央の発想で上からつくられたものであり、地域に根付く要素はもっていなかったと思います。

 

そんななか、国内観光客やインバウンドは急速に増えていただけに、地域活性化の促進剤としての期待はどの地域でも大きなものがありました。しかし2020年春以来の新型コロナウイルス感染症の拡大により、その効果はあまり望めなくなりました。

 

ワクチン接種が進んで感染者の数が下火になるなかでインバウンドの回復が予想されていますが、ボーダーレスに人が行き交う現在の世界では新型コロナウイルスの変異やさらなる新型のウイルス感染症がいつ流行するか誰にも予測が付きません。インバウンドはそのたびに痩せ細るしかなく、これも地域再生の大きな役割を担い得るものではありません。

対症療法から原因療法へ

結局、外からカンフル剤として巨大な商業施設や大手企業を誘致しても、また観光客やインバウンドを呼び込んでも、地域にとって持続可能な発展の力にはならないのです。それは体質改善をしないまま薬の投与を行う一時の対症療法に過ぎません。薬に頼ってしまったがゆえに薬なしでいられないようになってしまい、むしろ以前より抵抗力を落としているという面もあります。

 

下請けで楽をして売上を計上している間に、地元企業は自分の力で市場を開拓する営業力や技術力、発想力を失っています。大手企業の誘致は地域経済の生殺与奪の権利を大手企業に渡すことであり、大企業依存の経済構造と下請け慣れして創造力を失った地元企業だけを残すのです。

 

ところがこうした歴史が繰り返されているにもかかわらず、今なお地方行政の基本的なスタンスは外部から何かをもってくるというものになっています。「工業団地に大工場を」という旧来の施策こそ減少しましたが、本質的には変わらない他力依存・外部依存の活性化策が今も語られているのです。

 

島原 俊英

株式会社MFE HIMUKA 代表取締役社長

一般社団法人 日向地区中小企業支援機構 理事長

 

本連載は、島原俊英氏の著書『地域循環型経営』(幻冬舎メディアコンサルティング)から一部を抜粋し、再構成したものです。

地域循環型経営

地域循環型経営

島原 俊英

幻冬舎メディアコンサルティング

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