ゆるキャラや、B級グルメの盛り上がりは一時的…サスティナブルな地域復興がかなわない、地方中小企業の悲哀

ゆるキャラや、B級グルメの盛り上がりは一時的…サスティナブルな地域復興がかなわない、地方中小企業の悲哀
(※画像はイメージです/PIXTA)

日本の中小企業の倒産件数は2016年以降、毎年4万件を超えています。中小企業が時代の変化に適応し存続していくには、大企業の下請けから脱却し、主体的に地域創生に介入していくことが大切です。少子高齢化に人口流出…。地方が抱える課題にこそビジネスチャンスが埋もれていると指摘する、「宮崎中小企業大賞」を受賞した島原俊英氏が、著書でポイントを解説します。

 

中小企業は地方創生を政府に託してきた歴史が

長く下請けに甘んじてきた地方の中小企業は、いつか景気が回復して、注文が再び増え、業績が復活するというような他力本願な思考になりがちです。

 

政府や地元の行政に対して「とにかく景気をなんとかしてほしい」と求める中小企業経営者の声をよく耳にしますが、下請けという楽な位置に自らをおいてきたことで困難に立ち向かう力や自分で未来を切り拓く創造性をなくしてしまっていると思わざるを得ません。

 

また中小企業だけでなく、本来なら生き残りをかけて地方創生に取り組むべき立場の地方の行政組織までもが、中央依存の他力本願に陥っているのではないかと思います。地方の中小企業が景気回復策や経営支援策を地域行政に求め、地域行政が国に支援を求めるという「依存のスパイラル」が、本来の地方創生の妨げになっているのです。

 

地域振興のためにこれまで地方の行政や中小企業が求めてきたのは大企業や大工場、大規模商業施設や大学・研究施設などの誘致であり、大規模イベントの開催、さらに国内各地からの観光客やインバウンドの獲得でした。

 

そしてそれを成功させるために工業団地の開発や交通インフラの整備を進め、進出企業に対する助成金の支給、低利融資、事業税や固定資産税、不動産取得税の軽減といったさまざまな優遇策を用意してきました。これらを通してほかの地方との誘致競争に勝ち、地元経済の活性化を実現しようとしてきたのです。

 

確かに誘致に成功すれば雇用が生まれ、地元商店街の売上拡大など消費の拡大効果が見込めます。工場進出が決まれば新工場建設に伴う地元の建設業、機械メーカーへの波及、製造や出荷に伴う地元の原材料供給メーカー、運送業への波及効果も期待できるとされました。

 

もちろん自治体にとっては各種の税収の拡大が見込め、歳入増による地方財政の好転、県民へのサービスの拡充も実現できるとされたのです。しかし、結果は目論見通りにはなりませんでした。

大企業誘致による地方創生は、過去のセオリーに

例えば私の会社のある宮崎でも郊外に大手ショッピングモールが建設されて一時はにぎわったものの、景気の波を受けて経営する本社の財政事情が悪化し、不採算店については撤退したという話をよく耳にします。

 

しかしその頃にはすでに、地元の商店街はショッピングモール進出のあおりを受けて衰退の度を増しており、大型店が撤退したからといってその後をカバーする力はもうありません。結局一時のにぎわいがあっただけで地域は以前にも増して衰退してしまうのです。

 

大規模な進出を検討するような大手企業が戦っているのはグローバルな企業です。経営判断は常にその視点で下されるのであり、進出先の地元の事情が大きな要素として勘案されることはほとんどありません。

 

より安価に効率的な生産ができるなら、極端にいえば大手企業はどこにでも行きます。だからこそグローバルな競争力を維持しているともいえ、そうした企業に地域の持続可能な発展のパートナーであることを求めるのはもともと無理があります。

 

大企業が来れば、税収が増え、住民が増え、下請けとして入って受注を得る会社や工場が生まれ、小売りや飲食、サービス業もにぎわいを増すかもしれませんが、労賃コストの安い場所を求めて工場が移転するかもしれません。

 

さらにIT化によって支店・支社を縮小する可能性もあります。移転しないまでも経営が不調になれば、大手企業は少しでもコストを抑えようとします。

 

地方都市では行政や地元の信用金庫などが主催してマッチングイベントなどが開かれ、大手企業はそれを活用してより安い価格で発注できる地域の下請け企業を検討し始めるのです。

 

なじみの下請け企業であっても「それはやめてください」とはいえません。逆にマッチングイベントがにぎやかになるようにと考える主催者から参加を求められ、価格競争に巻き込まれていくことになるのです。

 

いったん下請けに入ってしまえばこのように常に価格で競わされる状況を回避することができません。そうした逃げ場のない状況に陥ったことによって、大企業・大工場の誘致が地域の持続可能な発展に寄与することは少ないという反省があったのか、今はIT企業の誘致に取り組む自治体が増えました。

 

次ページなぜIT企業の誘致が増加しているのか?

本連載は、島原俊英氏の著書『地域循環型経営』(幻冬舎メディアコンサルティング)から一部を抜粋し、再構成したものです。

地域循環型経営

地域循環型経営

島原 俊英

幻冬舎メディアコンサルティング

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