DXで真の需要を見極める仕組みづくりに成功した事例
「お金を払ってまで欲しい人がいるか」を検証できる仕組み
■事業:MIS「Makuake Incubation Studio(マクアケインキュベーション)」
■運営:株式会社マクアケ
〈ビジネスモデルの概要〉
マクアケは、インターネットビジネスを主とするサイバーエージェントの子会社として2013年に設立されました。購入型のクラウドファンディングサービスを提供しており、新しいモノやサービスを売り出したい事業者は、そのプロジェクトの概要がわかる情報をマクアケに掲載すると、買いたいと思った消費者から応援購入という名目の資金を得られます。
マクアケは、2016年にMIS(MakuakeIncubationStudio)を組織し、クラウドファンディングの仕組みをテストマーケティングのツールとして活用できるようにしました。モニター調査をはじめとする従来のテストマーケティングでは、そのモノやサービスに対する意見や感想などを集められるものの、お金を払ってまで利用したいかどうかは判別できませんでした。そのため、モニター調査では高評価を獲得していたにもかかわらず、期待どおりの売れ行きに至らないことが少なからずあったわけです。
MISであれば、消費者による応援購入であるため、お金を払ってまで欲しい人がどれくらいいるのかをシビアに見極めることができます。新しいモノやサービスへの感度が高い人たちに応援してもらえれば、クチコミでの拡散を期待できるかもしれません。利用者からすれば、新しいモノやサービスにいち早く出会えるというメリットがあります。MISにしても、応援購入額の20%と規定された手数料収入を増やすため、プロジェクトをより魅力的に発信しようと努めるはずです。
つまり、よりよいモノやサービスを提供/利用することに対して、提供者、利用者、MISの3者全員がポジティブになる「場」を創造したといえるでしょう。
進化の方向性
マクアケは、「場」の提供を通じて、さまざまなモノやサービスのテストマーケティングの結果をデータとして蓄積できているはずです。新しいモノやサービスを企画/開発するにあたり、このビッグデータを活用できないでしょうか。
データを解析することで、成功や失敗の条件、成功確率を高める方法、プライシングのあり方などを特定する。それを新しいモノやサービスを企画/開発する事業者に提供すれば、より大きな価値となります。この新たな価値創造は、マクアケのみならず、あらゆるクラウドファンディングサービスにあてはまるポテンシャルといってよいでしょう。
小野塚征志
ローランド・ベルガー