普段、何気なく使用している言葉が、じつはチームの「心理的安全性」を下げている「NG言葉」かもしれない──いつものひと言を変えることで、会話が増え、チャレンジが始まる。そして、チームが変わる。「心理的安全性」とは、「誰もが率直に、思ったことを言い合える」ことを指し、1965年にはすでに存在していた言葉でした。その後、2016年に米グーグル社が再発見、効果的なチームにとって「圧倒的に重要」と結論づけ、注目を集めました。本連載では、書籍『最高のチームはみんな使っている 心理的安全性をつくる言葉55』(原田将嗣著、石井遼介監修、飛鳥新社)から一部を抜粋転載し、いま大注目の「心理的安全性」についてご紹介します。
大変だけど頑張ろう▷▷やめたほうがいい仕事って
なんだろう
こと業務改善がテーマとなると、「これをしたほうがいい」「あれもするべき」と業務が増える方向に話が展開していくことが多いと思います。
現状の業務はそのままで、そこに追加(アドオン)する形で手間が増え、チーム全体の仕事量が増え忙しくなったものの、目覚ましい結果にはつながらず、最後は全員が疲弊……。あなたにもそんな経験はありませんか。何かを変えない限り、チームのリソースが自然と増えることはありませんよね。
メンバー各自の能力、モチベーション、時間、予算……これらが限られている以上、業務を増やすなら、今ある業務を減らすことも併せて考える。それが、ほんらい理に適った考え方だと思います。
しかし、メンバーからやめたほうがいいことを指摘するのは難しいもの。「これはもう、やめるべきでは?」と発言したら、周囲から「やる気がない」と曲解されてしまうかもしれません。やめたときのリスクやハレーションも読み切れません。何より、そのメンバーは今日まで「やめたほうがいいこと」に取り組んできたのです。「これまで、自身や仲間が無駄なことをしていた」と思いたい人などいないでしょう。
だからこそ「やめる」は、リーダーから切り出し、きっかけをつくることが重要です。
適宜リーダーから「やめたほうがいいことってなんだろう」と投げかけてみましょう。
「これから新規加盟店が1店舗増えるという連絡がありました。都内の大型店です。私も、ブランド強化という意味で、歓迎したいことだと思っています」
「はい! われわれにとって、念願の都内初出店ですね!」
「そこで『やめたほうがいい』タスクを洗い出したいと思います」
「え? 『やめたほうがいい』ってどういうことですか?」
「出店後、私たちの稼働やタスクは、今よりかなり多くなることが予想されます。連絡調整業務はもちろん、時にはあちらの店舗スタッフのトレーニングや、ヘルプでの派遣も想定されます。とはいえ、私たちチームの人員がすぐに増えるわけではありません。やめることができるタスクがないか、現在の業務フローを見直してみましょう」
「えーと……(それでも言いづらそう)」
「もし、何かひとつ、絶対にやめないといけないとしたら、何をやめますか?」
「……月次の、××報告書の〇〇って、実は誰も見ていない数字なんじゃないかなと」
株式会社ZENTech シニアコンサルタント
株式会社Eachway 代表取締役
コーチ/心理的安全性認定ファシリテーター
前職スターツグループでは注文住宅営業・マネジャー、人事部門を経験。トップ営業マンに贈られる金賞受賞。後に、ホールディング会社のスターツコーポレーションでコンプライアンス部門を経験。グループ社員約8,000名への教育・啓発活動に携わる。国際コーチング連盟認定マスターコーチの谷口貴彦氏に師事しコーチングを学ぶ。2020年4月、プロコーチとして起業。パーソナルコーチ、企業研修コーチに加え、スポーツコミュニケーション アドバイザー&コーチとしても活動。ZENTechでは企業へ心理的安全性を浸透させるための組織開発・育成計画の企画提案、研修講師、マネジャー向けコーチングを担う。2022年8月に『最高のチームはみんな使っている 心理的安全性をつくる言葉55』(飛鳥新社)を出版。
著者プロフィール詳細
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連載最高のチームはみんな使っている 心理的安全性をつくる言葉55
株式会社ZENTech 代表取締役
一般社団法人日本認知科学研究所 理事
慶應義塾大学システムデザイン・マネジメント研究所 研究員
東京大学工学部卒。シンガポール国立大経営学修士(MBA)。
神戸市出身。研究者、データサイエンティスト、プロジェクトマネジャー。
組織・チーム・個人のパフォーマンスを研究し、アカデミアの知見とビジネス現場の橋渡しを行う。
心理的安全性の計測尺度・組織診断サーベイを開発すると共に、ビジネス領域、スポーツ領域で成果の出るチーム構築を推進。
2017年より日本オリンピック委員会より委嘱され、オリンピック医・科学スタッフも務めた。
2020年9月に上梓した著書『心理的安全性のつくりかた』(日本能率協会マネジメントセンター)は27刷・14万部を数え、読者が選ぶビジネス書グランプリ「マネジメント部門賞」、HRアワード2021 書籍部門 「優秀賞」を受賞。2022年8月に上梓された『心理的安全性をつくる言葉55』(飛鳥新社)監修(3刷・2.2万部)も務める。
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連載最高のチームはみんな使っている 心理的安全性をつくる言葉55