なんとかします!▷▷正直、困りましたねえ
心理的安全性の高い関係といえども、商談にはもちろん交渉事がつきもの。価格交渉の際などは、厳しい要望がお客さまから出ることもあります。
セールスパーソンなら、「成約できるのならなんとか可能な価格にしたい」と思うもの。つい「なんとかします!」と言って、会社に持ち帰る……私も経験があります。
けれども、価格交渉の場面でも、お客さまとパートナーとなる関係が築ければ「私vsあなた」の対立構造ではなく「課題vs私たち」の構図がつくれます。それがこの言葉であり、いわば「一緒に困る」ためのフレーズです。
「価格」という課題に対して、一緒に考えていく「私たち視点」が持てれば、最後の詰めでシビアなやりとりがあったとしても、成約後の関係性を「パートナーシップ」に変えていくことができます。価格交渉の場ですら、関係性を築くためのきっかけにするのが、この言葉の力です。
「このサービスの通常コースの価格帯は、わかりました。予算的にはもう少し抑えていきたいのですが、価格は相談できるのでしょうか?」
「そうですか。ご予算はおいくらで考えていらっしゃいますか?」
「今年度の予算は50万円で考えています」
「そうでしたか。半額となると……正直、困りましたねぇ……(にこやかに)」
「……その代わりといってはなんですが、例えば……」
このようにストレートに伝えるのは、勇気がいることです。それでも、駆け引きではなく、できるフリをせず、お互いに実際のところが伝わることが「お客さまと心理的安全性の高いパートナー」関係を築くための、大切なステップです。
時には「失注する勇気」を持とう
できもしない約束をして、後で揉めてしまうよりも、あるいは、説得して無理やり売り込もうとするよりも、お客さまと真摯に話して一緒に困って、それでも難しければ「ごめんなさい、今回は難しそうですね」と「失注する勇気」を持つことが大切です。そのほうが、結果的に商談がスムーズに進んだり、「いい関係で失注」できたりするでしょう。
今回は難しくとも、「実は、御社とやりたくて、今期は頑張って予算を確保しました!」と半年後にご連絡をいただけることもあります。
自己開示をすることで、相手も自己開示がしやすくなる
チームの中で心理的安全性を高めていくためには「自己開示」が有効です。なぜなら、自分の考えや状況を伝えることで、相手に察することや忖度することを要求せずに済むからです。開示すること・伝えることで、相手の不安が減る効果があると言ってもいいでしょう。それはお客さまや取引先でも同じです。
私も商談の場で、予算やスケジュールなどの難しい要望が出ると、「ぶっちゃけて言いますと………」と話しています(にこやかに言うのがポイントです)。すると、お客さまも「ではこちらも、ぶっちゃけちゃいますと………」と言ってくださることも多いです。
商談中に困ったとき、なるべく「持ち帰って検討します」とは言わないようにします。その場で、自分の意見として本音で話すことが大事だからです。「今の時点での私の考えとしては………」という前向きなフレーズで自分の考えや状況認識を話していきましょう。