(※写真はイメージです/PIXTA)

「自分の店は黒字だから大丈夫!」そんな思い込みは大変危険です。世の中には「黒字倒産」を起こす会社も存在します。逆に、赤字であるのにすぐには潰れない会社も存在します。公認会計士の石動龍氏が著書『会計の基本と儲け方はラーメン屋が教えてくれる』(日本実業出版社)で解説します。

資金があれば赤字でも倒産しない

実は、倒産の原因は赤字がたまることではなく資金がなくなることです。当然ですが、お金がないと仕事は成立しません。

 

ラーメン屋は材料を仕入れられず、ラーメンが作れません。ワイン店はワインを買えなくて店に何も置けません。このような状態になると事業が続けられないので廃業になります。

 

逆にいえば、どれだけ借金を積み重ねても、支払いが続けられる限り、商売は続けられることになります。コストのかからない個人ライターはお金がなくても仕事ができるので、自主的にやめる以外で廃業する人はほとんどいないでしょう。

 

ところで、私が以前働いていた会社は、船で荷物を運ぶことを商売にしていました。

 

鉄鉱石や石炭など、埋蔵資源の輸送がメインで、オーストラリアや中国で積んだ荷物を、主に日本に船で運びます。大きい船は全長300メートルを超えるほどです。

 

船は自己資金で建造したり、オーナーから借りたりして用立てることになり、建造費は1隻あたり数十億〜数百億円と相当な値段になります。その船を運航させて投資を回収していくのですが、運賃には世界的な相場があり、日々変動していきます。

 

あるとき、運賃市況が大幅に下がり、毎日のように相当な額の赤字を計上することが続きました。経理部にいた私は、恐ろしい気持ちでそれを眺めていたものの、私が在籍している間は会社が倒産することはありませんでした。銀行がお金を貸してくれ、支払いが滞ることはなかったからです(その後倒産しました)。

黒字倒産が起こるワケ

一方で、「黒字倒産」という言葉があります。

 

2017年に電子基板設計会社のナルオ電子(大阪市)という会社が破綻しました。当時の記事によると、大手メーカーを顧客に抱えて前年比1.7倍程度の売上高10億円で黒字決算だったものの、急激な拡大で在庫負担支出が重くなり、決済資金が調達できずに倒産してしまったそうです。

 

2008年に破綻した不動産業のアーバンコーポレイション(広島市)は、直近3期は増収・増益で、直前期は600億円を超える経常利益を稼いでいました。ところが、急激に不動産市況が冷え込んだことで資金不足に陥りました。このように、黒字でも資金がなければ経営は続けられません。

 

「プロフィット・イズ・オピニオン、キャッシュ・イズ・ファクト(Profit is opinion,Cash is fact)」―直訳すると、「利益はただの意見、現金は事実」という意味です。これは、ソニーで初代CFOを務めた伊庭保(いばたもつ)さんが好んで用いた言葉だそうです。

 

どのような規模の企業であっても、利益だけでなく、資金繰りを念頭において経営を行うことが求められます。もちろん、赤字がずっと続くようなら借入れができなくなり、いつか資金も尽きてしまいます。

 

また、拡大のためには資金を投下し、設備や広告などへの投資が必要になりますが、前に進むためにアクセルを踏むのにも、バランスが重要です。

次ページ売上を増やす「顧客数×売上単価×回数」

本書は石動龍氏の著書『会計の基本と儲け方はラーメン屋が教えてくれる』(日本実業出版社)より一部を抜粋し、再編集したものです。

会計の基本と儲け方はラーメン屋が教えてくれる

会計の基本と儲け方はラーメン屋が教えてくれる

石動 龍

日本実業出版社

◎ラーメン屋会計士が「儲けを生み出す会計」を伝授! 本書は、公認会計士・税理士として働く傍ら、2020年10月に地元青森県八戸市で「ドラゴンラーメン」を開業した著者による、ラーメン屋を題材にした会計の入門書です。 …

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