「どんぶり勘定」で痛い目に…
私は1979年生まれの青森県八戸市育ちです。1998年の4月に上京し、大学に入りました。そのころ、スマートフォンはありません。情報を得る手段はテレビや雑誌が中心でした。
高校卒業までに東北を出たのは旅行の2回だけ。「関東地方は群馬や栃木までビルだらけの大都会」と思っていました。はじめて見たスタジオアルタに興奮し、近くの公衆電話から友達に電話をかけたことを覚えています。
そんな田舎の若者にとって、彗星(すいせい)のように現れたのがインターネットです。
八戸の家にパソコンはありませんでした。大学の授業ではじめて触れたインターネットは、情報をいくらでも得られる魔法のツールでした。すっかりはまり、家でもできるようにパソコンを買いました。
当時はダイヤルアップ回線で、つないだ時間で電話料金がかかります。すっかりはまった私は、電話代が気になりつつもカクカクの動画を見ていました。
そして、1ヵ月後に来た電話代の請求は5万円。貧乏学生だった当時の私には大金です。食事はすべて具なしカレーになり、授業をさぼって日雇いのバイトに出る日々が続きました。
商売での「どんぶり勘定」の落とし穴
このときの私にとって何が問題だったでしょうか。それは、使っていればお金がかかるツールを、管理せずに使い続けたことです。
実は、この状態は商売でもよくあります。
「どんぶり勘定」という言葉を聞いたことがあるでしょう。語源は諸説あるようですが、職人が前掛けに入れたどんぶりにもらったお金を入れて、そこから支払いを行ったことから、大雑把な収支管理を意味します。
よくあるパターンは、在庫管理をしないものです。例えば、工場などの製造業なら、仕入れた材料と残っている材料を比較して、使った量を調べなければ、モノを作るのにかかったお金がわからなくなります。
酒屋などの販売業なら、仕入品と在庫を比較して、なくなった量が販売した量と一致しているかを、定期的に確かめる必要があります。販売量と減った量が合わなければ、万引きされたなどのよくない理由で、商品がなくなったことになります。
また、毎日の収支を記録していなければ、どうしてお金が増えたり減ったりしているのかわからなくなります。毎日食べた3食を、1週間前からパッと思い出せる人は少ないでしょう。同じように、いつどのようにお金を使ったかを、正確に記憶することは普通できません。