(写真はイメージです/PIXTA)

ロシアによるウクライナ侵攻に対し、西側諸国は制裁を拡大していますが、果たしてどれほどの効果があるのでしょうか。ニッセイ基礎研究所、高山武士氏の分析です。

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    3―今後の注目点

    以上、戦争後のロシアについて、実体経済の状況を中心に確認してきた。

     

    総括すれば、ロシアは西側諸国の経済・金融制裁によって、実体経済面では景気の減速感が強まっていると評価できる。また、今後のロシア経済に関して、例えば、IMFは成長率を22年▲6.0%、23年▲3.5%、ロシア中銀は22年▲6.0-▲4.0%、23年▲4.0-▲1.0%と2年連続のマイナス成長を見込んでいる(いずれも7月時点の見通し)。

     

    ただし、ロシア経済の将来は戦争や制裁の行方に大きく左右されるだろう。例えばG7では、ロシア産石油価格に上限を設け、上限以上の価格で取引する場合は船舶への保険提供を禁止し、実質的に高価格での石油取引を困難にすることが検討されている。上限設定措置が実施されれば、これまでロシア経済の成長を支えてきたエネルギー収入が抑制される可能性がある。

     

    また、欧州が痛みを伴いつつも来年にかけ、ロシアが代替貿易先を確保する前に、迅速に「脱ロシア」達成の目途を付けることができれば、来年以降、ロシアはエネルギー輸出の大きな市場を失うことになる。これらはいずれもロシア経済の下押し圧力となる。逆に、石油価格の上限設定がうまく機能しない、あるいは「脱ロシア」が遅れれば、ロシアのエネルギー収入の維持につながり、経済への悪影響も軽減されるだろう。

     

    それだけに、この冬の欧州の「脱ロシア」の進展具合や、西側諸国のさらなる制裁措置とその実効性、代替貿易先としての中国やインドの動向が引き続き注目される。

    ※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
    ※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2022年10月6日に公開したレポートを転載したものです。

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