旧統一協会の「壺」「本」に課税できないのか?その理屈は?
旧統一協会は「霊感商法」により「聖本」や「壺」などを数百万円、数千万円といった法外な値段で信者らに売りつけたとされます。その収益に課税することはできないのでしょうか。
結論からいえば、残念ながら、現時点では、これらに課税することは困難といわざるをえません。
というのも、霊感商法は、【図表】に示した34の収益事業のどれにも該当しないからです。
「販売業」ではなく、あくまでも、前述した「お守り」「おみくじ」と同じ、宗教的意義の強い「喜捨」の性質を持つものだと説明せざるをえません。
刑事上の責任や民事上の責任を問うことはできます。しかし、「喜捨」という性質である以上、強迫や欺罔(ぎもう)によるものであったとしても、現在の税法では課税することが困難なのです。
なお、消費者庁が2022年9月15日に全国霊感商法対策弁護士連絡会の紀藤正樹弁護士ほか有識者を招いて開催した「第3回 霊感商法等の悪質商法への対策検討会議」において、中央大学の宮下修一教授(民法)は、「喜捨」という行為を既存の契約類型にあてはめることの難しさについて解説しています(同会議議事録P.4以降参照)。
ただし、宮下教授は同時に、税法の判例(最判平成20年(2008年)9月12日「ペット葬祭業事件」)を紹介しています。
この事件は、宗教法人がペット葬祭場を経営し、ペットの飼い主から料金を受け取ることが収益事業にあたるかということが争われたものです。
最高裁はペット葬祭場が収益事業にあたると判示しました。判決理由によると、その主要な根拠は「金額の基準が決まっており、サービスの対価にあたる」ということです。以下、原文を引用します。
「本件ペット葬祭業においては、(中略)料金表等により一定の金額が定められ,依頼者がその金額を支払っているものとみられる。したがって,これらに伴う金員の移転は,上告人の提供する役務等の対価の支払として行われる性質のものとみるのが相当であり,依頼者において宗教法人が行う葬儀等について宗教行為としての意味を感じて金員の支払をしていたとしても,いわゆる喜捨等の性格を有するものということはできない。」
宮下教授は、これを手掛かりに、「金額をある程度明示してこういったものを払いなさいということになると、これは単なる喜捨という枠は超える」と発言しています。
すなわち、霊感商法の場合も、物品の価格について「壺は●万円」「聖本は●万円」といったある程度の基準があったのであれば、喜捨ではなく【図表】の「①物品販売業」等の収益事業にあたると認定できる余地があるかもしれないということです。
しかし、この理屈も、物品の価格についての基準が設けられていなかったり、あいまいであったりすれば、捕捉することは困難です。
結局、問題は、旧統一協会が今なお宗教法人として法人格を有していることにあります。
もし、旧統一協会が宗教法人でなかったら、「34の収益事業」の枠組みを気にする必要はありません。霊感商法による収益についても厳格に課税が行われていたはずです。
実際、国税庁は、霊感商法の摘発を積極的に行っています(国税庁HP「平成26年(2014年)査察の概要」参照)。
反社会的行為を行っていることが指摘されているにもかかわらず、旧統一協会が宗教法人として税法上の優遇措置を受け続けることができているのは、法制度の不備なのか、運用の不備なのかは別として、欠陥があることは明らかです。
反社会的な行為を行った宗教法人に関する規律について、宗教法人法、消費者契約法といった既存の関連する法規のあり方を見直す必要があります。
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