全然知られていない給与所得者の「特定支出控除」とは
給与所得者の「特定支出控除」は、サラリーマンが「仕事」に関連してみずから支出した経費について、確定申告をすることで、給与所得の金額から差し引くことができるという制度です。
対象となるのは、以下の7類型です(所得税法57条の2第2項各号参照)。
1.通勤費
2.出張等の場合の「職務上の旅費」
3.転勤に伴う「転居費」
4.研修費
5.運転免許、簿記、弁護士、公認会計士、税理士などの「資格取得費」
6.単身赴任等の場合の「帰宅旅費」
7.図書費、衣服費、交際費等の「勤務必要経費」(65万円以内)
これらの特定支出の額の合計額が給与所得控除額の2分の1(最高125万円)を超えた場合に、その超えた部分について、給与所得から控除を受けることができます。
控除額の上限は、「7.図書費、衣服費、交際費等の『勤務必要経費』」について「65万円以内」という限度額がありますが、それ以外の類型については特に設けられていません。
特定支出控除の適用を受けるための手続は、確定申告書に特定支出の額の合計額を記入するとともに、以下の書類等を添付する必要があります。
・特定支出に関する明細書
・勤務先による「給与所得の支払者の証明書」
・源泉徴収票
・支出の事実と金額を証明する領収書等の資料
「特定支出に関する明細書」を作成することと、勤務先に「給与所得の支払者の証明書」の作成を依頼することがめんどうだと感じるかもしれません。
しかし、これらについてはいずれもフォーマットがあり、国税庁のHPからダウンロードできます(特定支出に関する明細書、給与所得の支払者の証明書)。
したがって、実はそこまでめんどうというわけでもありません。ぜひとも活用することをおすすめします。
活用の実益がある類型は?
ただし、上述した7つの類型のうち、実益があって重要なものは限られています。
すなわち、まず、「1.通勤費」「2.出張等の場合の『職務上の旅費』」については、そもそも勤務先が負担することがほとんどであり、実際上問題になることは少ないでしょう。
次に、「3.転勤に伴う『転居費』」「4.研修費」「6.単身赴任等の場合の『帰宅旅費』」については、勤務先が全額または一部を負担してくれるケースが多いとみられます。もちろん、みずから支出すれば、特定支出と認められます。
してみると、活用の実益があるのは「5.運転免許、簿記、弁護士、公認会計士、税理士などの『資格取得費』」と「7.図書費、衣服費、交際費等の『勤務必要経費』(65万円以内)」です。