投資家の「精神力」が試されるのはこれから
今年6月のこと。とある集まりで、オンライン証券の幹部が「今年はウクライナ危機で、金融市場が調整しているが、個人の積み立て投資は淡々と入ってくる。隔世の感がある」といった趣旨の話を述べられました。
それを聞いた筆者はこころのなかで「それはまだわからん」とつぶやきました。なぜなら、今年は円安によって、日本国内の個人投資家がほとんど損失を感じていないためです。
いざ、「円建ての海外株価」が下落し始めれば、国内の投資家がどう動くかはわかりません。リテラシーや精神力はまだ試されていないのです(→2020年のパンデミック時には、巨額の金融緩和と財政出動で「ろうばい売り」する前に金融市場はすぐに戻りました)。
「われわれが人間である」ことを思い出せば、「下落は恐怖感をもたらし、平常心ではいられなくなる」と考えておいたほうがよいはずです。筆者は「恐怖を感じない下落に留まっているうちは、まだ底は訪れていない」と考えています。
なぜ、書店には資産運用と自己啓発の本が多いのか
もしも、個人投資家が、もはや「投資家心理」に左右されなくなっているのならば、書店にあれほどの(古今東西の)資産運用関連の書籍が並べられていることはないでしょう(→似たことは、自己啓発関連の書籍にもいえるでしょう)。
われわれは人間であり、われわれには投資家心理を克服できていない長い歴史があります。これからも個人投資家は投資家心理に左右され続けるでしょうし、資産運用関連の書籍やビジネスは続くでしょう。
よくある投資家向けのアンケートで、資産運用について正しく回答する人の割合が増えていても、それは「平時」における画面上のクリックにすぎません。「いざ・有事」のときにパニックに陥らず、正しく実行できるかはまったく別の話です。
そうした「いざ」というときこそが、資産運用のアドバイザーが役に立つ(べき)ときです。
下落するリスクがあるときには、「リスク」としてそう伝えるべきでしょう。同時に「戻り」についても話すべきでしょう。
飛行機の機長アナウンスのように、あらかじめ伝えておけば、実際に下落が起きたときには「あのとき言ってくれてたね」となります。逆に、下落が起きず、「話が違うじゃないか!」と言われる場合もありますから、分散が重要です。