前回は、保険を活用した節税方法を説明しました。今回は、不動産投資で定番の節税スキーム「消費税還付」による節税が難しくなった理由を見ていきます。

税制改正により「消費税還付」の条件が厳しく・・・

消費税還付は特別なものではありません。消費税還付を簡単に説明すれば、要するに払い過ぎてしまった消費税を戻してもらう手続きです。

 

不動産投資では特別なスキームのように扱われていますが、課税事業者の一般企業であれば、消費税還付というのは普通に行っています。

 

なぜ特別扱いになるのかといえば、賃貸業は本来なら課税事業者になれないという前提があるからです。というのも家賃収入自体が非課税なので、そもそも税金を払っていません。そのため消費税とは無関係なのですが、駐車場、自販機といった課税売上を立てて還付を狙うわけです。

 

消費税還付は2016年の4月から、非常にやりづらくなりました。基本的なことから説明すれば、そもそも賃貸物件の家賃収入は消費税が非課税です。つまり、消費税は免除されており、消費税の還付を受けることもできません。

 

ところが不動産投資では、節税スキームとして、「不動産購入時のみ消費税課税事業者となり、消費税の還付を受ける」という手法が行われていました。

 

具体的には、「消費税課税事業者選択届出の手続きをして、消費税の課税事業者になる」「不動産を購入もしくは新築する」「家賃収入を発生させない」「自動販売機を設置して課税売上を発生させる」といったことを同年度に行うことで、不動産投資であっても消費税還付を受けることができました。

 

ところが、2010年の税制改正で、「課税事業者となった後2年以内に不動産(調整対象固定資産)を購入・新築した場合には、その後3年間は免税事業者・簡易課税への変更ができない」ということになりました。

 

一見、これまでの消費税還付ができなくなったように思えましたが、実は抜け道があったのです。それは、もともと課税事業者で「消費税課税事業者選択届書」を提出する必要のないケース、または「消費税課税事業者選択届出書」を提出して、2年間の強制適用期間適用後に調整対象固定資産を取得しているケースであれば、改正前と同様に消費税還付を受けることができたのです。

 

そして、2016年にまた税制改正が行われました。「高額資産を取得した場合における消費税の中小事業者に対する特例措置適用関係の見直し」では、「課税事業者になった後2年以内に取得」という年数制限が撤廃された内容となり、原則課税を適用されている課税事業者が高額資産を取得した場合、その後3年間は原則課税が強制されて、免税事業者、簡易課税適用事業者になることが不可能となりました。

建物価格が1億円以上なら、やる意味はある!?

しかし、手間はかかりますが、まだ消費税還付を行うことはできます。

 

その方法としては、家賃収入は非課税なので、それよりも、常に多くの課税所得を上げておけばいいのです。課税所得を上げるには金の売買が一番いいと思います。繰り返しできますので金額の調整もしやすいです。

 

ただ、大きな物件の場合は、それだけ非課税の家賃収入も多くなってくるため、より大きな課税売上を立てるためには、金の売買を何回も繰り返す必要があります。非常に手間がかかるものですが現在でも一応可能です。

 

今までであれば、5000万円程度でも消費税還付の効果は出ていました。100万円、200万円程度の手取りが残ってきますので、税理士の報酬を払ったとしてもかなり残ります。

 

今後は最低でも建物価格で1億円以上なければ、もうやる意味はないと思います。

 

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本連載は、2016年6月30日刊行の書籍『不動産投資の嘘』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

不動産投資の嘘

不動産投資の嘘

大村 昌慶

幻冬舎メディアコンサルティング

融資のこと、業者のこと、出口戦略のこと…不動産投資において知っておくべき情報は数多く存在する。 これから投資を行おうと思っている人、実際に投資を行っている人の多くは、本やセミナーから多くの情報を得る。しかし、そ…

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