「事業のため」と認められないと話にならない
高級車の購入代金を経費計上するには、まず、何をおいても、その高級車が「事業のため」に利用されるものであることが合理的に説明できなければなりません。
事業活動に自動車が実際に必要であることはもちろん、高級車の場合、なぜその自動車でなければならないかという理由付けが必要です。
この点については、「経営者として高級車に乗っていることで、取引先や営業先からの信用を得やすいというメリットがある」などの理由付けが考えられます。
なお、必要もないのに高級車を購入するのは、単なる無駄遣いです。世の中で「節税」「決算対策」と呼ばれる方法のなかには、単なる無駄遣いにすぎないものがかなり紛れ込んでいます。
仮に税金を減らすことができても、それ以上のキャッシュが流出してしまうのでは、本末転倒です。あくまでも、事業に必要な範囲内であることが重要なのです。
また、特に個人事業主の場合、注意が必要なのが、私用に使用する場合は全額経費計上することが認められないということです。「家事按分(かじあんぶん)」といって、その分を差し引いて税金を計算しなければなりません。
新車なら購入初年度の経費計上可能額は33.4%以下
次に、高級車が費用計上されるしくみについて説明します。
それは「減価償却」というものです。
減価償却とは、資産を購入した場合に、その代金の額を直ちに全額経費にするのではなく、一定の期間にわたって必要経費として落としていくことです。
「一定の期間」を「法定耐用年数」といい、その資産の種類によって決まっています。
法定耐用年数が短ければ短いほど、1年度あたりに費用計上できる額は大きくなっていきます。
国税庁HP「主な減価償却資産の耐用年数表」によれば、高級車は「一般用のもの」のうち「その他のもの」と扱われますので、法定耐用年数は6年です。
すなわち、購入初年度に全額経費計上できず、6年間かけて順次、経費計上しなければなりません。
ここで、減価償却費の計上方法には「定率法」と「定額法」がありますが、「定率法」を使います。詳細な説明と計算は割愛しますが、「定率法」のほうが、初年度に大きな額を経費計上できます。
法定耐用年数6年の場合、定率法では購入初年度に33.4%を経費計上できます。
ただし、減価償却費は「月割り」で計上しなければなりませんので、たとえば、12月決算で、10月に1,500万円の高級外車を新車購入して同月から使用した場合、その年度に経費計上できるのは3ヵ月分、つまり、1,500万円×33.4%×12分の3=約125万円となり、購入額の8%にとどまります。
このように、新車だと購入初年度に減価償却費として計上できるのはせいぜい33.4%、しかも、年度末に近づけば近づくほど、計上できる額は少なくなります。