(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●相場格言通り米金融市場はFRBに逆らわず、タカ派姿勢を受けて株安、債券安、ドル高の反応。

●FRBは高官発言やドットチャートなどで、FRBに逆らわない市場に対し、タカ派の意図を伝達可能。

●連続利上げを素直に織り込んだ市場は、物価の安定で安堵するとみるが、もう少し時間が必要か。

相場格言通り米金融市場はFRBに逆らわず、タカ派姿勢を受けて株安、債券安、ドル高の反応

米金融街ウォールストリートに、「米連邦準備制度理事会(FRB)に逆らうな」という相場格言があります。これは、米著名投資家のマーティン・ツバイク氏の言葉で、市場参加者にもよく知られています。その意味するところは、お金の流れをつかさどる金融当局の政策と反対の投資行動をとっても得はないので、FRBの政策方針には素直に従った方がよい、というものです。

 

最近のFRBは、7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)、8月の米ジャクソンホール会議、9月のFOMCにおいて、物価上昇率を目標の2%に戻すことに強く注力する方針を示し、金融引き締めに伴うある程度の景気減速は避けられないことも示唆しています。また、複数のFRB高官が、利上げ継続を支持する旨の発言をしていることもあり、米金融市場はタカ派姿勢のFRBに逆らわず、株安、債券安、ドル高で反応しています(図表1)。

 

FRBは高官発言やドットチャートなどで、FRBに逆らわない市場に対し、タカ派の意図を伝達可能

なお、FOMCは約6週間ごとに年8回開催されるため、例えば、FRBが連続利上げを想定していても、あるFOMCで利上げを決定した後、臨時開催がなければ、次回まで約6週間、空くことになります。しかしながら、その間でも、FRB理事や、地区連銀総裁(特にその年のFOMCで投票権を持つ総裁)が、講演などで積極的にタカ派発言をすることで、市場に連続利上げを強く意識させることができます。

 

また、通常、3、6、9、12月のFOMCでは、FOMCメンバーによる最新の経済見通しや、メンバーが適切と考える「政策金利水準の分布図(ドットチャート)」が公表されます。FRBは、政策意図を示す基本手段はFOMC声明であり、ドットチャートではないとしていますが、市場の注目度は非常に高く、実際、9月のFOMCで公表されたドットチャートの上方修正を受け、更なる利上げの織り込みが進みました(図表2)。

 

連続利上げを素直に織り込んだ市場は、物価の安定で安堵するとみるが、もう少し時間が必要か

一般に、金融政策の効果が浸透するまでには、半年から1年ほどの時間を要するとされます。FRBは3月に利上げを開始しているため、雇用や物価に影響があらわれるのは、これからです。そのため、FRBは今しばらく、利上げの効果がみえないなかで、追加利上げの判断をしなければならず、「行き過ぎた利上げによる景気失速」リスクを抱えたままとなります。

 

このリスクを回避する上で、タカ派発言やドットチャートなどのタカ派予想は、非常に重要です。これにより、金融市場は先んじて連続利上げを織り込み、自ら進んで物価抑制方向に動くためです(長期金利上昇や株安による逆資産効果など)。そのため、この先、利上げ効果が遅れて雇用や物価にあらわれれば、過度な連続利上げは不要となり、FRBに逆らわない金融市場に安堵が広がると思われます。ただ、それにはもう少し時間が必要とみています。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『「FRBに逆らうな」という相場格言【ストラテジストが解説】』を参照)。

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

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