失敗事例2 相続税申告前にアパートを売却したことが裏目に
収益物件のアパート1棟を相続した。ほかに相続したのは預金や有価証券等の金融資産。債務はほぼなし。相続人たちでどのように分けるか検討中に「アパートを売却するのはどうか」という案が出た。今後の管理運営なども加味した結果、売却して現金化したほうがいいと判断した。相続税申告期限前に売却を実施した。
その結果、土地に関する「小規模宅地等の特例」が適用されず、相続人たちは多額の相続税の納付をすることになってしまった。
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アサミ:これも「小規模宅地等の特例」の適用に関するケースね。
家の精:一つ前のは自宅用に関する特例だったが、今回は貸付用。収益を得るために所有していた物件も、一定の要件を満たしていれば特例が適用されるんだ。
アサミ:収益物件であるアパートを相続税申告前に売って現金化しちゃったから、特例が適用できなかったのね。
家の精:うむ。相続税申告期限(申告期限の延長があった場合は延長日)まで保有してから売却を実施していれば、必要以上の相続税を負担することはなかったな。ちなみに売買契約の成立自体が相続税申告期限前でも、売却実施が申告期限後であれば、特例は適用されるぞ。
アサミ:私の場合は収益物件を相続してないから縁のない話だけど。該当する人は覚えておいて損はないわね。
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失敗事例3 譲渡所得税の落とし穴
相続手続きが完了し、複数棟の不動産を相続したが、管理運営の面で長期保有はしないことを決定し、不動産売却の手続きを不動産仲介業者に一任した。不動産仲介業者は含み損のある不動産をまず売却、時間をおいて次年度に含み益のある不動産を売却した。
その結果、依頼主である相続人は、その年度で思わぬ譲渡所得税を納付する必要が出てしまった。
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アサミ:今度は相続税ではなく譲渡所得税の話ね。
家の精:仲介業者に売却手続きを丸投げして、違う年度に不動産を売却してしまったことが運の尽きだな。含み益の不動産を売却した分の譲渡所得税をきっちり負担することになってしまった。
アサミ:じゃあ、どうすれば節税効果が得られたの?
家の精:どっちの不動産も同一年度で売っていればよかったのさ。仮に含み損の不動産売却でマイナス100万円、含み益のほうがプラス100万円だったら、損益通算でプラマイゼロ。譲渡所得税を納付する必要がなくなるってわけだ。
アサミ:年度内に売却したのが含み益の不動産だけだと、売却益が丸ごと譲渡所得税の対象になっちゃうのか。
家の精:ちなみに譲渡所得税はほかの所得との損益通算ができない。土地建物同士や株式同士の売却は譲渡所得に含まれるから、それぞれで損益通算できるが、事業所得とか山林所得などの譲渡所得は損益通算できないぞ。
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露木 裕良
一般社団法人「不動産売却支援ネット」 理事長
「不動産高く売りたい.com」 サイト運営
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