61歳のエリート会社員、突然の退職のワケ
61歳のYさん。59歳の専業主婦の妻と2人暮らしで、ほかにすでに独立した32歳の息子と、27歳の娘がいます。
Yさんは誰もが知る企業に大学卒業後から60歳の定年まで勤め上げ、約2,200万円の退職金を受け取りました。その後同じ会社に5年間の契約で再雇用され、1年が経ったところです。
あるときYさんは、その2,200万円の退職金と約1,000万円の貯蓄があることから、突然退職を決断されました。
しかし冷静に考えると、この先の生活が心配になってきた……と、筆者のとある講演を聴講された後日、ご夫婦で相談にみえたのです。
相談のなかでYさんは、「しょせん、サラリーマンですから」とそれ以上退社の理由は話してくれませんでした。また、今後はどこにも勤める気持ちはないとのこと。
そこで、ご自身が考えているこれからの生活について伺いました。
するとそのライフプランは、数十年後に家計破産が起きるかもしれない危険なものだったのです。
“空白の4年間”が「老後破産」の引き金に
Yさんが主に心配されていた内容は、以下の2点です。
2.住宅ローンは完済できるか?
そこでまず、Yさんの現況を整理しました。
Yさんは、株式や投資信託といった元本保証のない金融商品での運用は好みません。銀行の定期預金で、約1,000万円の貯蓄があります。
住宅ローンの担保物件は、Yさんが35歳のときに4,900万円で購入したYさん名義の自宅(戸建て建売住宅)です。自己資金900万円、残りの4,000万円を金融機関で融資を受けて購入。70歳までに返済予定です。
実はYさんは54歳のころから、金融機関などのサイトを利用して、再雇用後の年収を345万円として、65歳まで勤務した場合のシミュレーションをしていました[図表3参照]。
それによると、住宅ローンを毎月返済し、65歳以降、貯蓄を取崩しながら生活すると、100歳の時点でも貯蓄残高は黒字だったそうです。筆者も同じ条件でシミュレーションしたところ、Yさんが100歳のときの貯蓄残高は、約1,300万円であると確認することができました。
しかし実際のYさんはすでに退職されていますので、改めて65歳までは無収入、それ以外は同じ条件でシミュレーションし直してみました。
すると、貯蓄残高は徐々に減っていき、13年後Yさんが74歳のころには貯蓄が底を尽きてしまうことがわかりました。つまり、74歳で「家計破産」することがわかったのです。
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