くまモンとは真逆の、頑張らない系「ゆるキャラ」に
「こうすれば売れます!」と宣言した、新人が書いた70ページ超の分厚い企画書。
しかし、「ゆるキャラ」がどういう性格でどんな個性をもっているのか、というキャラクター設定は企画書内では、「5歳くらい。絶滅したかわうその友達を探している」というかなりざっくりとした骨格だけで、仕草については、人気絶頂のくまモンを参考にするイメージでした。
くまモンには「PR活動を真面目にやらないといけない場面で暴走。アテンドが慌てる」という暴走系のおもしろさがあるんですよね。「ゆるキャラ」といえばおっとり、穏やかなイメージがありましたが、それを覆すおもしろさがありました。
ちなみに、くまモンの成功例にならったやんちゃな設定の「ゆるキャラ」というのは、けっこういます。
これまで穏やかだったキャラクターが急に激しい性格になったり、破天荒な性格を売りにした暴走系キャラクターが誕生したり、くまモンに続けとばかりに、陽キャで明るい性格設定のキャラクターを陰キャで真面目なアテンドが担当している……というキャラクターがとても多くなりました。
ところが、どうやってもなかなかうまくいかない。「どうしてだろう?」という悩みをよく耳にしますが、私が思うに、明るい性格でやんちゃに振る舞える真の陽キャは、そもそも地方自治体職員にはならないのではないでしょうか。
公務員が、ある日突然くまモンのお姉さんに進化することはないのです。
いくら人気のキャラクターをマネしてみても「この人たち無理してやってるな」と観ている人に伝わってしまっては意味がありません。くまモンやふなっしーのマネをしてスベったら、つらいだけです。
これは企画書段階ではなく、運営している途中で決めたことですが、しんじょう君は無理をしないことにしました。
いまだから正直言うと、先に述べたように、私も最初はくまモンのような元気いっぱい! どこでも大騒ぎ! そんなしんじょう君を目指していたんですよ。
しかし、実際にしんじょう君と一緒にステージに立つと、どうもしっくりきません。
「今日は元気いっぱいダンスしてね!」イベント前にお願いをすると、コクリと頷くので、よしよし、今日は頑張ってくれそうだな……と思っていても、ステージに上がるといまいちやる気がないみたい。
そこで「この子は違うのかもしれない」という直感に従い、くまモンとは逆方向の頑張らない系「ゆるキャラ」として個性を伸ばしていくことになりました。
元気ない、やる気ない、動かない。まさに逆くまモン。そんなしんじょう君がつくり上げられていきました。