ゆるキャラしんじょう君が「がんばらない」理由。「くまモンやふなっしーのマネをしてもつらいだけ」

ゆるキャラしんじょう君が「がんばらない」理由。「くまモンやふなっしーのマネをしてもつらいだけ」
(画像はイメージです/PIXTA)

地方自治体の頭を悩ます「地域活性化」「都市発展」問題。近年は、ウェブやSNSを活用した情報発信に力を注ぐ政策が多く見受けられます。なかでも「ゆるキャラ」や「ご当地アイドル」といったポップアイコンを活用し、情報拡散力を高める手法は2010年代初頭に巻き起こった「ゆるキャラブーム」終焉後も定着しています。くまモン、ふなっしーなど、ゆるキャラ界のスターが続々と誕生し、飽和状態となった2016年。自身が企画プロデュースした高知県・須崎市のしんじょう君をゆるキャラグランプリ1位に押し上げた市役所職員(当時)による著書『日本一バズる公務員』(扶桑社)から抜粋し、「ゆるキャラ」運営の秘訣や誕生秘話について解説します。

くまモンとは真逆の、頑張らない系「ゆるキャラ」に

「こうすれば売れます!」と宣言した、新人が書いた70ページ超の分厚い企画書。

 

しかし、「ゆるキャラ」がどういう性格でどんな個性をもっているのか、というキャラクター設定は企画書内では、「5歳くらい。絶滅したかわうその友達を探している」というかなりざっくりとした骨格だけで、仕草については、人気絶頂のくまモンを参考にするイメージでした。

 

くまモンには「PR活動を真面目にやらないといけない場面で暴走。アテンドが慌てる」という暴走系のおもしろさがあるんですよね。「ゆるキャラ」といえばおっとり、穏やかなイメージがありましたが、それを覆すおもしろさがありました。

 

ちなみに、くまモンの成功例にならったやんちゃな設定の「ゆるキャラ」というのは、けっこういます。

 

これまで穏やかだったキャラクターが急に激しい性格になったり、破天荒な性格を売りにした暴走系キャラクターが誕生したり、くまモンに続けとばかりに、陽キャで明るい性格設定のキャラクターを陰キャで真面目なアテンドが担当している……というキャラクターがとても多くなりました。

 

ところが、どうやってもなかなかうまくいかない。「どうしてだろう?」という悩みをよく耳にしますが、私が思うに、明るい性格でやんちゃに振る舞える真の陽キャは、そもそも地方自治体職員にはならないのではないでしょうか。

 

公務員が、ある日突然くまモンのお姉さんに進化することはないのです。

 

いくら人気のキャラクターをマネしてみても「この人たち無理してやってるな」と観ている人に伝わってしまっては意味がありません。くまモンやふなっしーのマネをしてスベったら、つらいだけです。

 

これは企画書段階ではなく、運営している途中で決めたことですが、しんじょう君は無理をしないことにしました。

 

いまだから正直言うと、先に述べたように、私も最初はくまモンのような元気いっぱい! どこでも大騒ぎ! そんなしんじょう君を目指していたんですよ。

 

しかし、実際にしんじょう君と一緒にステージに立つと、どうもしっくりきません。

 

「今日は元気いっぱいダンスしてね!」イベント前にお願いをすると、コクリと頷くので、よしよし、今日は頑張ってくれそうだな……と思っていても、ステージに上がるといまいちやる気がないみたい。

 

そこで「この子は違うのかもしれない」という直感に従い、くまモンとは逆方向の頑張らない系「ゆるキャラ」として個性を伸ばしていくことになりました。

 

元気ない、やる気ない、動かない。まさに逆くまモン。そんなしんじょう君がつくり上げられていきました。

次ページ実は2代目…〝しんじょう君〟には初代の存在が

※本連載は、守時健氏の著書『日本一バズる公務員』(扶桑社)から一部を抜粋し、再編集したものです。

日本一バズる公務員

日本一バズる公務員

守時 健

‎ 扶桑社

高知県須崎市という人口約2万人の小さな町に「革命」を起こした、ある男の物語。 新人職員にもかかわらず、ゆるキャラ・しんじょう君をプロデュースし、ゆるキャラグランプリで1位を獲得。 さらに、ゆるキャラとSNSを駆使し…

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