(画像はイメージです/PIXTA)

地方自治体の頭を悩ます「地域活性化」「都市発展」問題。近年は、ウェブやSNSを活用した情報発信に力を注ぐ政策が多く見受けられます。なかでも「ゆるキャラ」や「ご当地アイドル」といったポップアイコンを活用し、情報拡散力を高める手法は2010年代初頭に巻き起こった「ゆるキャラブーム」終焉後も定着しています。くまモン、ふなっしーなど、ゆるキャラ界のスターが続々と誕生し、飽和状態となった2016年。自身が企画プロデュースした高知県・須崎市のしんじょう君をゆるキャラグランプリ1位に押し上げた市役所職員(当時)による著書『日本一バズる公務員』(扶桑社)から抜粋し、「ゆるキャラ」運営の秘訣や誕生秘話について解説します。

キャラクターモチーフのニホンカワウソが絶滅

いよいよニホンカワウソをモチーフにしたしんじょう君のデザイン公募がスタート。その翌月、衝撃的な事実が発表されました。

 

ニホンカワウソ、絶滅のお知らせ。

 

最後に発見されてから10年くらい経っていましたが、よりにもよって私がキャラクターデザインを募集した翌月に絶滅する? むしろ、私がキャラクターをつくろうとしたせいで、ニホンカワウソが絶滅してしまったのではないかとすら思いました。

 

指定されたその日から、市役所には全国のマスコミから問い合わせが殺到しました。すでに「カワウソをモチーフにしたゆるキャラをつくるよ!」と伝えてあったことから取材内容は……

 

「絶滅種に指定されたことで今後須崎市の『かわうそのまちづくり事業』や観光行政はどんな展開をしていくの?」

 

「絶滅種に指定されたし、キャラクターづくりはどうするの?」

 

「ぶっちゃけ、いま、どんな気持ち?」

 

いつも静かな部署の電話が鳴りやまず、課内はパニック状態になりました。

 

あるスポーツ新聞からの「企画は中止ですか?」との問いに「いやまぁ……つくりますけど……」と答えたところ、次の日の新聞に『ゆるキャラ白紙』と大きな見出しで書かれ、メディアは適当なんだなと衝撃を受けたものです。

 

「今更ゆるキャラなんてやっても、意味ないでしょ」

 

取材でいらした新聞記者にはっきり言われたりもしました。

 

しかし、ちょっと待ってください。私、すごいことに気がつきました。

 

確かにニホンカワウソは絶滅種に指定されてしまったわけですが、高知県の小さな町・須崎市とニホンカワウソ、そして清流・新荘川。この3つのキーワードが全国的に流れたわけです。

 

都会に住むマスコミの方が今後の観光行政を知りたがってくれているってことは……これってもしかして、チャンスじゃないですか?

「ゆるキャラ」しんじょう君を疑問視する声が多発

絶滅指定された生き物のキャラクターをつくることに関しては、当然、庁内でもたいへん議論になりました。

 

「キャラクターを替える必要ある?」

 

「予算的に大丈夫?」

 

「市民はカワウソがまた、ひょっこり現れるんじゃないかという希望を持っている。絶滅を宣伝に利用するのは不謹慎では?」

 

予算の心配や、キャラクターを新デザインに変更することへの議論が市の偉い人たちのあいだで起きました。

 

ほんと、当初は「ゆるキャラブームに乗り遅れたのに今更なんで?」みたいな雰囲気がすごくて、最初から応援してくれてたのは数人でした。

 

ちなみに最初から応援してくれていた人たちの名前は全員覚えてますので(笑)。みなさんもこういうのは覚えられるということを今後の人生の教訓にしてくださいね。

 

庁内ではしんじょう君の効果を疑問視する声が常にありました。変な見た目の新人職員が提出した企画が採用され、未知の〝ゆるキャラ運営〟を始めるのですから、ご心配は当然です。

次ページ逆境ながら市長は「ゆるキャラ」企画を推進

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    ※本連載は、守時健氏の著書『日本一バズる公務員』(扶桑社)から一部を抜粋し、再編集したものです。

    日本一バズる公務員

    日本一バズる公務員

    守時 健

    ‎ 扶桑社

    高知県須崎市という人口約2万人の小さな町に「革命」を起こした、ある男の物語。 新人職員にもかかわらず、ゆるキャラ・しんじょう君をプロデュースし、ゆるキャラグランプリで1位を獲得。 さらに、ゆるキャラとSNSを駆使し…

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