初代しんじょう君のリニューアル版として誕生
ところで、須崎市の「ゆるキャラ」として活躍するしんじょう君。実は2代目なんですよ。
そう言うと、「ゆるキャラ」って世襲制なの? しんじょう君ジュニアとかって名前なの? って感じですが、そうではなくて須崎市には、しんじょう君が生まれる10年前に初代にあたるしんじょう君というマスコットキャラクターがすでに存在していたのです。
須崎市内を流れる新荘川(しんじょうがわ)での目撃を最後に国内での生息例がないとされたニホンカワウソをモチーフにつくられ、川の名前「新荘」に「信条」と「真情」の意味も込めてしんじょう君とほんのり劇画タッチのイラストで名づけられました。
初代はイラストのみでマスコット化はされておらず、活動の場は市のホームページや広報誌の片隅など。まあまあの認知度でしたが、「ゆるキャラ」として認知されているかどうかも不明なものでした。
須崎市を盛り上げるための「ゆるキャラ」企画ですので、市民のみなさんに受け入れられなければいけません。「またつくるの?」「前のほうが良かった」などネガティブコメントが出ないようにするために、新キャラクターは「しんじょう君をもっと活用するリニューアル版」として企画することになりました。
さらに、須崎市民に2代目しんじょう君へ愛着をもってもらうための施策として、キャラクターのデザインは須崎市はもちろん、全国からの公募形式を採用することにしました。
人というのは、当事者意識を持つとその対象に愛着を持つものです。キャラクターをつくるのであれば、その誕生に関わる人は多ければ多いほど盛り上がるのは間違いありません。
それに、全国公募にすれば、もしかしたらデビュー前から広く全国の方にしんじょう君の存在を周知できるかもしれないという淡い期待もありました。
新キャラクター募集に全国から400件を超える応募が
さっそく『須崎市カワウソキャラクター新デザイン募集』を告知をスタートしたところ、ありがたいことに市内外から400件を超える応募がありました。その中からデザイン案を絞り込み、最終選考のために『須崎市マスコットキャラクター総選挙』を行いました。
2013年1月、市民のみなさんを対象に行った24日間の総選挙では2,000人を超える方々から投票してもらい、35の作品が選ばれました。
さらにその後、採用作品を選定するため市民の方と市職員で構成する選定委員会を開催。投票と委員会の最終選考の結果、選ばれたものが現在のしんじょう君です。
その審査を決めていく過程で、市内の掲示板にデザインに関する総選挙のポスターを掲示していると、中学生が集まって騒ぎ始めました。
「あ~! かわうそのがぁ、始まっちゅう~!」
「私、このかわうそがえい!」
「しんじょう君、かわいがやけんど!」
中学生たちが盛り上がっているのを目撃して、私は「もしかして良いことしているんじゃない?」と、ほっこりした気持ちになったのを覚えています。
詩人ポール・ヴァレリー曰く「我々は、後ずさりしながら未来に入っていく」。前例となる過去の出来事は目の前にあり、よく見えるけれど、未来は目に見えないからおっかなびっくり進むよね、みたいな意味です。
見えないからこそ周囲を巻き込み、当事者として仲間に加わってもらい、一緒に進んでいこうと考えています。
守時 健
パンクチュアル 代表