(画像はイメージです/PIXTA)

地方自治体の頭を悩ます「地域活性化」「都市発展」問題。近年は、ウェブやSNSを活用した情報発信に力を注ぐ政策が多く見受けられます。なかでも「ゆるキャラ」や「ご当地アイドル」といったポップアイコンを活用し、情報拡散力を高める手法は2010年代初頭に巻き起こった「ゆるキャラブーム」終焉後も定着しています。くまモン、ふなっしーなど、ゆるキャラ界のスターが続々と誕生し、飽和状態となった2016年。自身が企画プロデュースした高知県・須崎市のしんじょう君をゆるキャラグランプリ1位に押し上げた市役所職員(当時)による著書『日本一バズる公務員』(扶桑社)から抜粋し、「ゆるキャラ」運営の秘訣や誕生秘話について解説します。

いち公務員でもやれることはないか

私が配属された企画課とは、一般的に行政の政策を統括したりする部署です。公共事業どうしようとか、地域の情報通信基盤を整備しようとか、過疎地域の自立を支援するため〝地域おこし〟を手伝ってくれる人を見つけようぜ……とか、さまざまな角度から市の街づくりを企画するわけです。

 

そんな、割と大事な部分を担う企画課に新人が配属されるというのはけっこう稀だったようです。ところでみなさん、都市を発展させるためには、何が必要になると思われますか? 

 

所得を漏出させず市内で循環させるとか、人口減少を食い止めてみるとか、都市機能を充実させるとか、雇用を増やしさらに人口を増やすとか、教育と子育てへの支援で未来の納税者を育てるとか……さまざまな要素があります。

 

私は、現状を打開するための都市発展に必要な要素は『産業の転換』・『都市計画』・『情報発信』の3つだと考えています。

 

とはいえ、市の産業を主体的に変化させる『産業の転換』や、将来あるべき理想像に向けて市に新たな規制を設け整備を行う『都市計画』って規模が大きすぎるし、国や大企業がやるような大事業です。

 

私のようなしがない地方公務員ひとりの力ではどうにもできそうにありませんし、時間がかかりすぎて一生かけても終わらないかもしれません。

 

でも、『情報発信』なら私ひとりの力でもできそうじゃないですか?

 

インターネットやSNSを上手に駆使すれば、少ない予算と労力で世界中に須崎市の情報を知らせることができます。さらに、須崎市を背負って発言する情報拡散力のあるアイドル的存在がいれば、効果は絶大です。

 

そこで、当時よく目にしていたゆるキャラを使い、須崎市の情報発信をしたら良いのでは? と、思いつきました。

 

観光や産業では東京や京都、沖縄といった有名観光地には一生勝てない須崎市ですが、個性を武器に戦うゆるキャラなら、大都市を相手に勝てるチャンスが万に一つくらいはありそうだと考えたのです。

情報拡散力があるアイコンとしてゆるキャラを育てたい

手始めに、ゆるキャラの先進事例を上層部に説明するために、あらゆるキャラクターを調べました。

 

ところが、ふと思ったんです。私、漫画やアニメは人並みに好きですが、キャラクターというものにまったく興味がない。(というか私みたいなのが「ゆるキャラ大好きー!」って感じでも怖いと思いますが)

 

ゆるキャラの知識にいたってはまったくのゼロ。そこで、まずはゆるキャラってワードの入ったニュースを読み漁りました。

 

また、「そもそも、ゆるキャラってなんなの?」という基礎概念を『ゆるキャラ論』という本で学ぶことにしました。

次ページ「ゆるキャラ」の運営ノウハウを猛勉強

※本連載は、守時健氏の著書『日本一バズる公務員』(扶桑社)から一部を抜粋し、再編集したものです。

日本一バズる公務員

日本一バズる公務員

守時 健

‎ 扶桑社

高知県須崎市という人口約2万人の小さな町に「革命」を起こした、ある男の物語。 新人職員にもかかわらず、ゆるキャラ・しんじょう君をプロデュースし、ゆるキャラグランプリで1位を獲得。 さらに、ゆるキャラとSNSを駆使し…

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