(画像はイメージです/PIXTA)

地方自治体の頭を悩ます「地域活性化」「都市発展」問題。近年は、ウェブやSNSを活用した情報発信に力を注ぐ政策が多く見受けられます。なかでも「ゆるキャラ」や「ご当地アイドル」といったポップアイコンを活用し、情報拡散力を高める手法は2010年代初頭に巻き起こった「ゆるキャラブーム」終焉後も定着しています。くまモン、ふなっしーなど、ゆるキャラ界のスターが続々と誕生し、飽和状態となった2016年。自身が企画プロデュースした高知県・須崎市のしんじょう君をゆるキャラグランプリ1位に押し上げた市役所職員(当時)による著書『日本一バズる公務員』(扶桑社)から抜粋し、「ゆるキャラ」運営の秘訣や誕生秘話について解説します。

入庁して間もない新人の企画に100万円の予算が

 市に提出した70ページ超の「須崎「ゆるキャラ」」企画書の一部

 

この厚さ1センチに及ぶ、新人が書いたほぼ嫌がらせのような企画書を意気揚々と上司に提出したわけですが、「その辺おいといてー」レベルの紙束を、なんと奇跡的にもすべてに目を通してくれ「いいじゃない。やってみようか」となったのだから驚きです。

 

入ったばっかりの新人が70ページの企画書を持ってきても、いまの私は読むかどうかわかりません。(あのときの係長には本当に感謝しています)

 

それどころか、〝何を出しても通らない〟ことで知られる『ふるさと納税による基金活用事業提案募集制度』に「出してみなよ」と推してくれたのです。

 

須崎市は結構前からふるさと納税をやっていまして、集まった50万円とか100万円くらいを財源に、事業提案を募集していました。

 

絶対通らないと評判の事業提案制度で、入庁間もない新人職員の提案なんか通らないだろうとの前評判にもかかわらず、どういうわけかこちらも奇跡的に企画が通ってしまい、恐れ多くも私ごときの〝「ゆるキャラ」企画〟に100万円もの予算がつくこととなりました。

 

予算がついたといっても、当時「ゆるキャラ」ブームも落ち着いてきていて、

 

「今さら『ゆるキャラ』なんかやって、流行るんか?」

 

と、企画のプレゼン時、みなさん冷めた感じでしたが「変な新人がおかしな企画書を出してきたけど、おもしろそうだからやらせてみるか」くらいの感じで、しんじょう君という「ゆるキャラ」の命が、須崎市企画課に宿ったのです。

すべての現象は繰り返されている

「ゆるキャラ」業界の先輩たちからヒントと教えをもらいながら書き上げた70ページ超の企画書。なかには、「ゆるキャラ」が売れるためにどうすればいいのかを考え抜いたロードマップを書いていたので、ここで紹介したいと思います。

 

私の持論ですが、この世には真のイノベーションってほとんどないと思っています。

 

すべての現象は繰り返されていて、いまある素晴らしいものは、以前つくられた物をリメイクした改良版と言えるのではないでしょうか。

 

たとえば、紀元前540年頃にピタゴラスが発見したと言われてきた三平方の定理も、つい先頃、紀元前2000年頃の古バビロニアの遺跡で発見されています。

 

紀元前550年代に産まれたと言われる孔子の言葉は現代でも有用です。レディー・ガガの前にマドンナがいて、AKB48の前にはおニャン子クラブがいる感じでしょうか。 

 

だから、「ゆるキャラ」ブームも長い歴史を振り返れば、目新しい現象ではないと思っていました。当時、すでに爆発的人気を誇る先輩が複数いましたので、先輩たちが成功するまでに「何を」「どうやった」のかを徹底的に分析し、それを須崎市「ゆるキャラ」計画のためのロードマップとして参考にさせていただきました。

次ページ偉大な先輩くまモンやバリィさんから学ぶ

※本連載は、守時健氏の著書『日本一バズる公務員』(扶桑社)から一部を抜粋し、再編集したものです。

日本一バズる公務員

日本一バズる公務員

守時 健

‎ 扶桑社

高知県須崎市という人口約2万人の小さな町に「革命」を起こした、ある男の物語。 新人職員にもかかわらず、ゆるキャラ・しんじょう君をプロデュースし、ゆるキャラグランプリで1位を獲得。 さらに、ゆるキャラとSNSを駆使し…

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