(画像はイメージです/PIXTA)

地方自治体の頭を悩ます「地域活性化」「都市発展」問題。近年は、ウェブやSNSを活用した情報発信に力を注ぐ政策が多く見受けられます。なかでも「ゆるキャラ」や「ご当地アイドル」といったポップアイコンを活用し、情報拡散力を高める手法は2010年代初頭に巻き起こった「ゆるキャラブーム」終焉後も定着しています。くまモン、ふなっしーなど、ゆるキャラ界のスターが続々と誕生し、飽和状態となった2016年。自身が企画プロデュースした高知県・須崎市のしんじょう君をゆるキャラグランプリ1位に押し上げた市役所職員(当時)による著書『日本一バズる公務員』(扶桑社)から抜粋し、「ゆるキャラ」運営の秘訣や誕生秘話について解説します。

「ゆるキャラ」の師匠に学ぶ

『ゆるキャラ論』の著者・犬山秋彦さんは、須崎市とは比べ物にならない人口約38万人という東京都品川区にある大崎駅西口商店会のキャラクター・大崎一番太郎を運営しています。

 

大崎一番太郎は地域外からの認知拡大を狙ってSNSでこまめな情報発信を行っていて、メディアの目に留まりやすい話題を発信し、取材を受け続けることで広告宣伝コストを最小限に抑えていました。

 

しかもクリエイティブ・コモンズの「CC0(シー・シー・ゼロ)」という仕組みを使って著作権を放棄しているのですが、名前に地名が入っているので、キャラクターが無許可でグッズ化されても地元のPRになります。

 

さらに『名探偵コナン』の工藤新一役や『ONE PIECE』のウソップ役で有名な声優の山口勝平(かっぺい)さんが品川区在住という縁からTwitterで仲良くなり、コラボしていることでも話題になっていて、本当に学びが多いキャラクターです。

 

さらに、ゆるキャラ運営のサポートやイベントを開催している『一般社団法人日本ご当地キャラクター協会』にも頻繁に連絡し、ゆるキャラ運営に関する知識を惜しみなく与えてくれました。

 

世の中はゆるキャラブームの真っ最中で多忙にもかかわらず、我々のためにこんなに時間を割いてもらって大丈夫なのか? とこちらが心配するくらい、懇切丁寧に、運営方法やキャラクター設定について教えていただきました。

 

そうして『しんじょう君』というキャラクターの骨格を二人三脚状態でつくり上げていったのです。

完成した「ゆるキャラ」企画書はA4用紙70枚超え

入庁してから3ヵ月後。「須崎市を少しでもおもしろい町に変えたい」という熱意で本を読み漁り、書き上げた企画書は、気づけばA4用紙70枚を超える大作に。

 

 市に提出した70ページ超の「須崎ゆるキャラ」企画書の一部

 

企画書にはまず、情報発信の重要性と、それを活用できるSNSにはどういったプラットフォームがあるのか、それぞれの特徴と仕組み……といった説明を書いてみました。

 

さらに、SEO対策ってこうやるといいよ、という解説に加え「Twitterでこういう投稿をすればバズりやすい」というマーケティングの基本みたいなことをたくさん書きました。

 

そして、完全に若気のいたりなのですが、「5年で『ゆるキャラグランプリ』1位をとります!」という、いま思えば暑苦しく生意気な宣言までしておりました。

 

ちなみに、この年行われた『ゆるキャラグランプリ2012』では前年比2.5倍となる865体が参加。愛媛県今治市のバリィさんが見事グランプリを勝ち取っているわけですが、何もない状況からの私の宣言がどれほど生意気だったか、おわかりいただけるでしょうか……。生意気にもほどがあります。

 

 

守時 健

パンクチュアル 代表

 

※本連載は、守時健氏の著書『日本一バズる公務員』(扶桑社)から一部を抜粋し、再編集したものです。

日本一バズる公務員

日本一バズる公務員

守時 健

‎ 扶桑社

高知県須崎市という人口約2万人の小さな町に「革命」を起こした、ある男の物語。 新人職員にもかかわらず、ゆるキャラ・しんじょう君をプロデュースし、ゆるキャラグランプリで1位を獲得。 さらに、ゆるキャラとSNSを駆使し…

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