(画像はイメージです/PIXTA)

節税対策の情報が溢れかえる現代で、どこから手を付ければよいかわからない経営者も少なくないでしょう。消費税に関わる「インボイス制度」施行が迫り、「電子帳簿保存法」の改正が起こるなか、「本当に税を節約できる」方法や、やってはいけない節税対策について、冨田健太郎氏・葛西安寿氏の著書『【新版】小さな会社が本当に使える節税の本――ひとり会社・零細会社・中小会社まで使える!』(自由国民社、2022年8月30日発売)から一部を抜粋してご紹介します。

消費税のインボイス制度は仕入税額控除を受けられる

インボイス制度とは、2023年10月1日に施行される新しい税制度のことで、正式名称は「適格請求書等保存方式」といいます。

 

この税制度が施行されると、支払側の企業において「適格請求書」の保存がない場合、仕入税額控除が受けられません。つまり、「適格請求書」を保存することを条件に、支払側の企業は仕入税額控除を受けることができる制度なのです。

 

具体的な数値で説明しましょう。

 

ある法人が税込み2万2000円で仕入れたものを、税込み3万3000円で売ったとします。

 

仕入れ額の2万2000円のうち、2万円が仕入、2000円が仮払消費税です。売上に係る消費税は3000円ですが、2023年9月30日までは、受け取った請求書を保存することで2000円を控除できるので、結果として3000円-2000円=1000円を納税することになります。

 

しかし、2023年10月1日以降は、今までの請求書の記載事項に加え、請求書を発行する側の「適格請求書発行事業者登録番号」などの記載が必要となるのです。

 

この適格請求書発行事業者登録番号の記載がない場合、2000円の仮払消費税を控除することができず、3000円-0円=3000円を納付しなければならなくなってしまいます。

適格請求書発行事業者登録番号は誰が取得するのか?

適格請求書発行事業者登録番号とは、会社が税務署長に登録申請書を提出することで通知される番号のことです。

 

仕入税額控除を受けるためには、発行された請求書に番号が記載されている必要があるため、請求書を発行する側が適格請求書発行事業者登録番号を取得しなければなりません。

 

請求書にこの番号の記載がないと、支払側の企業が仕入税額控除を受けることができず、不利益を被ることなります。

免税事業者が課税事業者になると損することもある

それでは、支払側が不利益を被らないように、請求書を発行する側が適格請求書発行事業者登録番号を取得すればよいのかというと、そうではないケースも発生します。

 

適格請求書発行事業者登録番号を取得した事業者は、強制的に消費税の課税事業者となり、消費税の申告が必要になります。

 

今まで免税事業者として消費税の納税が免除されていた事業者については、適格請求書発行事業者登録番号を取得することで、支払側には不利益が被らないようになったものの、自らの会社は消費税の納税が発生することになってしまうのです。では、どのように対応すればよいのでしょうか。

 

現時点で、自分の会社がすでに課税事業者の場合、支払側に不利益が被らないよう早めに「適格請求書発行事業者登録番号」を取得しましょう。登録の申請は、2023年3月31日までとなっているので、気をつけてください。

 

一方、現状で免税事業者の場合、次のような検討が必要です。

①取引先に原則課税で消費税申告をしている事業者がいる

適格請求書発行事業者登録番号を取得したほうがよいかと思います。

 

ただし、取引先が原則課税で消費税申告をしているかどうかはわからないケースが多いと思いますので、取引先に法人や個人事業主がいる場合は、基本的に適格請求書発行事業者登録番号を取得するとよいでしょう。

②取引先に消費税申告をしている事業者がいない

取引先が一般消費者のみの場合など、①に該当する事業者が一切いないという場合は、適格請求書発行事業者登録番号を取得しなくても理論上は問題ありません。

 

[図表1]インボイス制度に対する業者の対応

 

インボイス制度自体は節税と直接的な関係はありませんが、対応を怠ると相手側に迷惑がかかる可能性もあるため、正しく理解しておきましょう。

 

 

冨田 健太郎

税理士

 

葛西 安寿

税理士

 

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冨田 健太郎・葛西 安寿

自由国民社

ひとり社長も使える、小さな会社向けのロングセラー節税本が「新版」で登場。 賃上げ促進税制、地方拠点強化税制、消費税インボイス対策など「最新税法&情報」で増補改訂。 戦略なき節税策が会社をつぶす!“すごい節税策…

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