翌期に調整が必要ならば決算賞与は支給しない
ひとつめは「決算賞与の計上」です。決算賞与は決算時に未払いであっても、一定の要件を満たすことで経費として計上することができます。従業員のモチベーションも上がるので決算賞与の支給は悪くない手段といえます。
しかし、翌期の賞与を減らして調整すればよいと考えている経営者も少なからずいます。
決算賞与は払ったけれども、年間の賞与額は例年と変わらなかったというケースも見受けられます。翌期に調整するつもりであれば、そもそも決算賞与を支給しないほうがよいかもしれません。
税金はその場その場ですが、従業員は未来永劫会社のために働いてくれる貴重なリソースです。賞与を調整弁として使うのはあまりおすすめできません。
節税目的の原価割れ販売は本末転倒
2つめは決算セールです。決算時に原価割れ販売をすることで棚卸資産の評価損を計上する手法ですが、節税目的で原価割れ販売をするというのは本末転倒でしょう。少しでも利益を乗せて販売する戦略を練ったほうがよほど会社に残る利益は大きくなります。
また、税務否認される可能性があることも否めません。リスクを負って損失を出す手法をあえてとるというのは、経営上問題があるのではないでしょうか。
さらにいえば、原価割れ販売をすることで自社のブランドイメージが低下する恐れも十分にあり、その恩恵が多少の税額減であれば、よい施策といえないのではないでしょうか。
決算賞与と決算セールは、利益の調整弁としておすすめの節税策といわれています。目先の税金のことだけを考えるのであれば確かに悪くない手法ですが、将来を見据えた場合は、むしろ愚策となってしまう可能性が高いです。
どちらも所詮は期ズレです。期ズレのために将来を台無しにすることがないよう、十分注意してください。
冨田 健太郎
税理士
葛西 安寿
税理士