4人に3人が養育費を受け取れていない
逮捕された女性は、生活保護を受給しながら複数人の子どもを育てていたとのことです。もしも子どもたちの父親から養育費を受け取ることができていれば、今回の事態は避けられた可能性があります。
では、養育費の受給状況はどうなっているでしょうか。厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」を見てみましょう(【図表1】)。
20歳未満の子を養育している母子世帯の母の受給状況は「現在も受けている」が24.3%となっており、約4人に1人にとどまっています。
また、「過去に受けたことがある」すなわち、途中から何らかの事情により受給していないケースは15.5%となっており、当初の養育費の取り決めが守られていないケースが相当程度あることが推察されます。
未婚シングルマザーはほとんど養育費を受け取れていない!
ただし、それ以前に、そもそも養育費の取り決めすらされていないケースも多くなっています。
本来、父親が子を養育するのは法律上の義務です(民法877条)。それは、離婚しようが、未婚だろうが変わりないはずです。したがって、養育費の取り決めは当然行わなければならないものです。
しかし、現実には、「取り決めをしている」が42.7%にとどまっているのに対し、「取り決めをしていない」が54.2%と過半数にのぼっています。
さらに、未婚のシングルマザーのみに着目すると、事態はさらに過酷です。
すなわち、「離婚」の場合は45.9%が取り決めをしているのに対し、「未婚」の場合は13.3%しかありません(【図表2】)。
しかも、そのうち「現在も受けている」は54.2%なので、未婚のシングルマザー全体でみると7.2%しか受け取れていないということです(【図表3】)。
つまり、今回のいたましい事件の容疑者女性と同じ未婚のシングルマザー世帯の場合、現状、大多数の父親が責任を果たさず「逃げ得」が許されてしまっているということです。
このように、養育費の問題は、結局、以下の2つに集約されます。
1.養育費の取り決めをしているケースが少ない
2.養育費の取り決めをしても履行義務が守られていないケースが多い
いずれに関しても、次に述べるように、背景には構造的な問題があると考えられます。