(※写真はイメージです/PIXTA)

専業主婦が離婚を考える場合、一番の悩みどころは離婚した後の経済的な問題です。「年金分割」という制度があり、婚姻期間中の夫の厚生年金を半分受け取ることができるのですが…。フィナンシャルプランナーの長尾義弘氏が著書『私の老後 私の年金 このままで大丈夫なの? 教えてください。』(河出書房新社)で解説します。

教えて!60歳専業主婦が離婚したら年金はいくら?

▶60代で離婚を検討中/離婚したら、年金分割の上乗せはどれくらい?

現状

結婚生活30年になるシニア世代の夫婦。妻は60歳で専業主婦、61歳の夫は65歳まで再雇用で働くつもりです。60歳までの夫の平均賃金(月額)は40万円でした。

 

65歳からの年金受給額の見込みは、

 

●妻──月額6.5万円(年額約78万円)
●夫──月額15.5万円(年額186万円)

 

夫婦の合計は約22万円ですが、この見込みは崩れるかもしれません。

 

妻が離婚を考えているからです。ただ、大学卒業後は自営業の父を手伝い、結婚してからは夫の扶養範囲内でパート勤め。厚生年金に入った経験がなく、年金は基礎年金しかありません。離婚すると、妻の年金は月額約10万円。かなり厳しい生活になりそうです。

 

対策

離婚したときは、「年金分割」という制度があります。婚姻期間中の夫の厚生年金を半分受け取ることができるのです。合意分割で按分割合が50%の場合、30年分の厚生年金を計算すると約6万円ですから、約3万円は妻が受け取れます。自分の基礎年金と合わせて約10万円になりますが、生活するには乏しい金額です。ここは自分の老後を支える働き方を考えましょう。

 

今後は厚生年金に加入しながら働くのです。仕事は70歳まで続けます。こうすると、新たに10年分の厚生年金が上乗せされます。さらに、年金も70歳まで繰下げ受給します。年金分割で受け取る分も繰下げが可能です。

 

繰下げ受給によって増額された基礎年金と厚生年金を合わせると、70歳の年金額は月に約15万円になります。なんとか暮らしていけるのではないでしょうか。

 

なお、婚姻期間中の厚生年金の計算は、少々複雑です。正確な数字を知りたいときは、年金事務所に尋ねてください。夫に知られずに確かめることもできます。

 

離婚する際は年金分割があるとはいえ、金額はさほど大きくならないケースが多いものです。あまり期待しすぎないほうがいいでしょう。

 

長尾義弘著『私の老後 私の年金 このままで大丈夫なの? 教えてください。』(河出書房新社)より。
長尾義弘著『私の老後 私の年金 このままで大丈夫なの? 教えてください。』(河出書房新社)より。

 

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    本連載は長尾義弘氏の著書『私の老後 私の年金 このままで大丈夫なの? 教えてください。』(河出書房新社)の一部を抜粋し、再編集したものです。

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