STEP3 地面反力
和田 まずは[図表2]をご覧ください。
こちらは実際に走っているときの、右足が着き足、左足が浮き足でベースポジションにある状態です。
父親 このような写真はよく見かけますね。
和田 そうですよね。この次の一歩で、空中で足を入れ替えて、左足着き足で右足浮き足のベースポジションを作らなければいけません。もっと細かく説明すると、左足が地面に接地するタイミングと右足がベースポジションの高さに来るタイミングを合わせる必要があるんでしたよね。ここまで大丈夫ですか?
父親 はい。「姿勢」と「入れ替えのタイミング」大丈夫です。
和田 では、ここで問題です。
①浮き足である左足が真下に接地するまでの移動距離
②着き足である右足が身体の前に来るまでの移動距離
①と②で、より移動距離が長いのはどちらでしょうか?
父親 そんなの簡単です。②でしょう?
和田 そうですよね。
では、次の問題です。次のベースポジションまで左足は距離が短いだけでなく重力のあと押しも受けて移動します。反対に、右足は重力に逆らいながら左足よりはるかに長い距離を移動しなければなりません。普通に考えたら左足のほうが早いタイミングでベースポジションに到達します。右足はこの差をどうやって埋めればいいのでしょうか?
父親 え、あ……下ろすほうの足をゆっくりにして……いや、上げてくる足を素早く? そんなことできないですよね。どうやっていいかわからないです。
和田 そうですよね。
右足より左足のほうを遅く動かして、次の一歩では左足を右足より遅く動かす。そんなことが器用にできるわけがないですよね。
理屈では簡単にわかるのに、どうやったらいいかわからない。ここが「足の速さは才能だ」と皆さんが思い込んでしまう理由なんです。
父親 空中スイッチをすれば接地時間が短縮できて速く走れることはわかるけど、空中スイッチができない。和田さん、これってまさに才能の差なのではないのですか?
和田 いいえ、違います。絶対にテクニックの差です。
父親 和田さん教えてください。どうすればよいのですか?
和田 もちろんです。それは 「地面反力」を使えばいいのです。
父親 地面反力?
和田 そうです。地面反力を使うテクニックを習得すれば、誰でも空中スイッチができるようになります。
父親 地面反力とはなんですか?
和田 地面反力とは、地面に力を加えることで跳ね返ってくるエネルギーのことです。走りにおいていえば、「腱の力」、すなわちバネを使うことで地面から跳ね返ってくる力です。この力を利用することで、自分の筋力で動かす以上の速さで、地面に着いた足をベースポジションへと移動させることができるのです。
和田 賢一
走りの学校 校長