実践で実感できる「ベースポジション」の重要性
父親 はじめはすごく難しいと思ったんですけど、やっているうちに安定感が出てきた感じがします。
和田 いい感じです! 形もきれいです。実は僕も、ジャマイカで初めてやったときは、この姿勢に違和感がありました。お父さんや僕だけではなく、難しいというお声はたくさんの方からいただきますが、理由はシンプルです。お父さん、ここまで膝を高く上げる動き、日常生活のなかで行ったことはありますか?
父親 いえ、階段を上がるときもここまでは上げないと思いますし……もしかすると一度もないかもしれません。
和田 そうですよね。今お父さんが難しいと感じたのはまさに、やったことがないからなんです。日常生活で慣れている動作とそうではない動作では、精度が違ってくるんです。
運動会で親子綱引きなんかやると、翌日筋肉痛になってしまったことはありませんか?
父親 昨年、なりました(笑)。
和田 (笑)それと同じです。
日頃からトレーニングしていくと2回目、3回目と数を追うごとに筋肉痛はこなくなるし、その運動に慣れると無意識にできるようになります。お父さんが今ベースポジションを維持するのがきつく感じるのは、能力がないからではなく、この動きに慣れていないだけなんです。ベースポジションも、繰り返し練習すれば必ずできるようになります。
スプリントというのは、お父さんがやったことのない姿勢の連続です。お父さん、今までできなかったことができるようになったら、今より足が速くなる可能性が高まっていくと思いませんか?
父親 たしかに、そんな気がしてきました……でも本当に、私にもできるんですよね?
和田 もちろんです! 走りにおけるお父さんのポテンシャルは、ほとんど眠っている状態です。眠っているその力を目覚めさせるために一緒に頑張っていきましょう。
父親 そうおっしゃっていただき、安心しました。息子のためにも、なんとしても習得したいです。燃えてきました!
和田 その意気です、お父さんなら、絶対できますよ! ベースポジションの習得から、走り方をランニングからスプリントへと変えていきましょう! 次はランニングテクニックとスプリントテクニックの、決定的な違いについてお話しさせていただきます。
父親 姿勢の違いだけではないのですね。気になります!
スプリントテクニックの土台となるベースポジションの重要性は、これでもかと言うほど伝わってきた。
やり続けていれば習得できるような気がして、正直ホッとしている。
これから説明してくれるというスプリントテクニックとランニングテクニックの決定的違いとは、いったいどんなことなんだろうか。
STEP1で学んだこと
1、「足が速い=秒速10mで走れること(0.1秒で1m走れること)」と定義すると、秒速10mを実現するためには、接地時間を0.1秒に抑えなくてはならない。
2、0.1秒の接地時間を実現するには、着き足が接地した瞬間、浮き足が着き足よりも前に来ており、次の接地を力強くするための準備ができている必要がある。
3、ベースポジションは0.1秒の接地時間を実現するのに不可欠な、スプリントの土台となる姿勢である。
和田 賢一
走りの学校 校長