ゼロコロナ政策による中国の「ロックダウン疲れ」
消費者心理に重くのしかかる2つ目の政策が、新型コロナウイルスの感染拡大を食い止める中国の戦略であるゼロコロナ政策です。厳しいロックダウンにより経済活動は大きく落ち込みました。
足元では新型コロナウイルスのオミクロン型の新たな派生型「BA.5」の感染拡大に伴い3,000万人近い人々が行動制限の対象となっています(注4)。しかし、マイケルは中国当局も容赦ないゼロコロナ政策が消費者心理におよぼす影響を注視していると指摘しています(図表2)。
マイケルは新型コロナウイルスの感染拡大の抑制と国内景気のテコ入れのバランスを改善する方向で軌道修正が進行中であると考えています。今後は中国経済への影響が少ない行動制限が導入される可能性があります。
注4:(出所)ブルームバーグ・ニュース, “Some 30 Million People Face Covid Curbs: China Lockdown Tracker,” 2022年7月11日。
中国以外の投資機会
マイケルは中国の景気減速についてさまざまな議論を展開していますが、今年に入り、無差別に売られてきた他の新興国市場にも魅力的な投資機会を見出しています。
マイケルが注目する主な経済特性として、優れた社会的結束力と良好な財政ガバナンス、海外資金への依存度の低さ、FRBよりはるかに早くインフレ退治に乗り出し信用力が高い中央銀行の存在などがあります。
地域別では新興国市場の中でアジアが突出しています。たとえば、韓国の中央銀行は2021年8月にアジアでいち早く利上げに踏み切りました(注5)。韓国のサプライチェーンは中国とつながっており、中国の入国制限の緩和により恩恵を受ける可能性があります。
マイケルはインドネシアにも注目しています。インドネシアは天然資源に恵まれ、世界的に需要が旺盛であり、石炭、天然ガス、鉱石(銅やニッケルなど)と並び、世界のパーム油の供給量の60%を占めます(注6)。
インドネシアは財政赤字の削減を目指す財政規律のスタンスを重視しています。マイケルのチームでは、国際商品価格の高騰を追い風にインドネシアは2023年には財政赤字をGDPの3%以下に抑える目標を達成すると予想しています。
アジア以外では、マイケルは中南米もリスク調整後ベースで魅力的な投資機会を提供していると考えています。たとえば、チリは負債による資金調達ニーズが比較的低く、中央銀行の信用力も高いです。中央銀行は先ごろ、通貨防衛に向けて今後3ヵ月間で250億米ドル規模の為替介入の用意があることを明らかにしています。
インフレや世界的な景気後退をめぐる先行き不透明感は広がっていますが、新興国市場のマクロ経済ファンダメンタルズ分析の運用担当者は世界各地にはまだ投資機会が存在すると考えています。
注5:(出所)Kim, S. “Bank of Korea Joins Jumbo Hikers as Inflation Fight Heats Up,” ブルームバーグ、2022年7月13日。
注6:(出所)Listiyorini, E. “Palm Oil Exports From Top Grower Set to Soar 60% in Price Blow,” ブルームバーグ、2022年7月20日。
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