本記事は、フランクリン・テンプルトン・ジャパン株式会社が9月1日に配信したレポート『マクロ見通しー現実味を増すインフレ加速と景気後退』より一部を抜粋したものです。

「賃金物価スパイラル」が発生する可能性

賃金物価スパイラルの経済的な仕組みはかなり単純であり、家賃と消費者物価の上昇をきっかけに労働者が賃上げを求めるようになることで引き起こされる可能性があります。賃金の上昇は企業のコストを押し上げ、企業は値上げせざるを得なくなります。

 

これまでのところ実質賃金のスパイラル的な上昇は見られず、むしろ図表5が示すように、実質賃金の伸びは徐々に鈍化しています。

 

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[図表5]米国の平均時給:民間部門全産業出所:ファクトセット、米労働省
期間:2016年12月~2022年6月

 

しかし、だからといって賃金物価スパイラルの可能性を否定できるわけではありません。6月の消費者物価指数が示すように、結局のところインフレはなお根強く進行しています。インフレが長引くほど家計の期待インフレ率は上昇し、賃上げを求めるようになります(注5)。

注5:(出所)Inman, P. “Would a wage/price spiral cause inflation to run out of control?” ザ・ガーディアン。

いまから40年前…「ボルカー時代」のインフレ対策

悲観論であれ楽観論であれ、新たな具体的データによって現在の見方が変わる可能性もあります。今の所、インフレに関してはソナルが最もタカ派寄りの見方をしています。ソナルは経験則から市場が将来のインフレ予想を苦手としていることを知っています。用心するに越したことはありません。

 

しかし、ボルカー型の強力な政策対応は必要でしょうか? 1980年代初めにFRB議長に就任したポール・ボルカーは金利を19%まで引き上げることで急激なインフレを抑え込みました。その結果、深刻な景気後退が引き起こされましたが、景気後退は短命に終わったのです。

 

 

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