(※写真はイメージです/PIXTA)

20歳以上60歳未満の国民には、毎月、国民年金保険料を納めることが義務付けられています。経済的な問題から納付が難しい人は、免除や納付猶予を受けることが可能です。本稿ではその猶予制度の一つであり、多くの人々が利用する「学生納付特例制度」について見ていきましょう。本制度にはどんなメリットやデメリットがあるのかを改めて確認しつつ、そのデメリットを解消する方法を解説します。

学生納付特例を受けた場合、年金はどれくらい減る?

本制度によって年金が減ることについては、多くの学生が認識しているようです。しかし、実際どれくらい減るのか、おおよその金額はご存じでしょうか?

 

まず、日本年金機構によると、令和4年度の国民年金(老齢基礎年金:満額)は月額6万4,816円。1年間では77万7,792円ということになります。これは「平均的な収入(賞与含む)」で「40年間就業した場合に受け取り始める給付水準」です。

 

では、4年生大学に現役合格し、20歳から大学卒業まで学生納付特例制度を利用し、23歳から納付を始めた場合はどうなるのでしょうか。

 

未納期間は2年間ですから、納付義務が生じる20歳~60歳までの40年間(480ヵ月)のうち、実際に納付したのは38年間(456ヵ月)。

 

この場合、1年間の年金受給額は73万8,902万円になります(77万7,792円×456ヵ月÷480ヵ月で算出)。

 

40年間で全額納付した場合に比べ、受取額は年間3万8,890円(約5%)減ることになります。年金額は物価変動に応じて毎年度改訂されるため、必ずしも約3.9万円の差額が生じるとはいえませんが、この全額納付に比べて約5%少ない状態は「一生」続きます。

 

また、大学に入るまで浪人する場合も珍しくないでしょう。もし一浪して4年制大学に入り、大学卒業までの3年間で学生納付特例制度を受けた場合はどうなるのでしょうか。

 

保険料を24歳から60歳までの37年間納付した場合、1年間の年金受給額は71万9,457円(77万7,792円×444ヵ月÷480ヵ月)。全額納付者との差額は年間5万8,335円(約7.5%)です。生涯を通し、この約7.5%少ない状態が続いていきます。

納付猶予を受けても「年金を減らさない」方法

以上のように、学生納付特例制度を利用することで将来の年金受給額には着実な差が生じます。

 

しかし、この受給額の差は取り戻せないわけではありません。学生納付特例制度を含む免除・納付猶予には「追納制度」というものがあります。これは保険料を後から納めることで、将来の年金受給額を増やせる制度です。

 

追納できる期間は10年以内です。たとえば学生納付特例で令和4年分(2022年分)の保険料を猶予した場合、令和14年(2032年)までであれば追納することが可能です。

 

ただし、追納する額には注意が必要です。

 

猶予を受けてから2年度目までは「当時の保険料の額」だけを納めればよいのですが、3年度目以降に追納する場合は「当時の保険料額+加算額」となります。加算額は期間が経過するほど上乗せされていくため、追納する場合は早く支払うに越したことはありません。

 

「猶予を受けてから〇年目」というのは、免除・猶予等の承認を受けた期間の「翌年度」を出発点として数えていきます。

 

たとえば令和4年分を猶予した場合、2年度目は令和6年(2024年)、3年度目は令和7年(2025年)となります。令和7年目以降に追納する場合は、先送りするほど加算額が上乗せされていきます。

 

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