公的年金の減額は、もはや「既定路線」
内閣府『令和4年版高齢社会白書』によると、2021年10月1日時点での日本の総人口は1億2,550万人。そのうち65歳以上人口は3,621万人、高齢化率は28.9%だった。また65歳以上人口のうち、75歳以上は1,867万人で、総人口に占める割合 は14.9%である。
ご存じのように、日本は人口減少への道を突き進んでおり、2053年には1億人を割り込み、2065年には8,808万人になると推計されている。一方、日本の高齢者は「団塊の世代」が65歳以上となった2015年は3,379万人、「団塊の世代」が全員後期高齢者となる2025年には3,677 万人に達すると予想されている。
2042年に3,935万人でピークを迎えたあとは減少に転じるとされるが、 総人口の減少率が高齢者の減少率を上回るため、高齢者率は2036年には33.3%となり、まさに国民の3人に1人が65歳以上となると予想されているのである。
1950年には65歳以上1人に対し現役世代12.1人という割合だったが、2020年には現役世代2.1人へ。2065年には、現役世代1.3人で1人の高齢者を支えるとも言われているのだ。
そのような状況下、公的年金はどうなるのか。日本の年金制度は「賦課方式」といって、年金支給に必要な財源は、その時々の保険料収入からねん出されている。また、具体的な受給額は、以下のように計算される。
■基礎年金
780,900円(平成16年度額)×改定率×保険料納付月数/480月
■厚生年金(報酬比例部分)
平均標準報酬額※×5.481/1000×被保険者の月数
※過去の標準報酬に再評価率を乗じて現在価値に置き換える
現役世代が現在の年金受給者を支える形式なので、いまの現役世代が年金を受給する年齢になると、その時の現役世代に支えてもらうことになる。
高齢化率が進展する中、当然だが、年金は減っていくことになる。
同じ大卒でも、正社員・非正規社員で天地の差
上述した年金の算出式からもわかるように、会社員の年金のうち、厚生年金部分は収入によって大きく変わる。同じ大卒の40代前半でも、正社員と非正規社員であれば、その差は明確だ。
大卒男性・40代前半・正社員の場合
平均月収:44万6,200円
手取り額:およそ33万円
推定年収:684万4,400円(賞与含む)
大卒男性・40代前半・非正規正社員の場合
平均月収:28万9,200円
手取り額:およそ22万円
推定年収:364万1,000円(賞与含む)
正規社員は年収700万円近い水準だが、非正規社員はその半分程度に過ぎない。
【大卒男性「正社員」「非正規社員」推定年収の推移】
出所:厚生労働省『令和3年賃金構造統計調査』より算出
〈数値左:正社員、右:非正規社員〉
20~24歳:3,415,500万円/2,826,400万円
25~29歳:4,518,400万円/3,570,000万円
30~34歳:5,335,200万円/3,585,500万円
35~39歳:6,252,200万円/3,599,200万円
40~44歳:6,844,800万円/3,641,000万円
45~49歳:7,480,400万円/3,655,000万円
50~54歳:8,418,800万円/4,633,500万円
55~59歳:8,334,000万円/4,187,800万円
60~64歳:6,497,600万円/4,745,200万円
上記の「正社員」と「非正規社員」それぞれが将来受け取れる年金額を計算してみよう。
正社員が65歳で受け取れる年金は、老齢基礎年金6.4万円、老齢厚生年金11.5万円。月に17.9万円。
非正社員が65歳で受け取れる年金は、老齢基礎年金6.4万円、老齢厚生年金6.4万円。月に12.5万円。
学歴は同じでも、正規・非正規で給与の格差はおよそ2倍だ。将来受け取れる年金は、月に5.4万円の差。1年なら64万8,000円であり、老後生活を20年とした場合、1,296万円も違ってくる。
ここでの計算はあくまでも一例に過ぎないが、大きな差となるのは想像に難くない。
いまの40代はまさに「就職氷河期世代」。就職に大変な苦労がついて回った世代だ。かなりの人数がやむなく非正規として社会人生活をスタートしたが、その後転職などを成功させ、キャリアを築けた人は多くない。若い時代についてしまった格差から、年齢を重ねてもなお逃れらないという、厳しい現実がある。
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