●9月以降の利上げペースを探る上で8月26日のパウエルFRB議長の講演に市場の注目が集まる。
●パウエル議長は、利上げ継続が適切、ペースはデータ次第など、従来通りの見解を示すとみられる。
●その場合、9月以降の利上げペースは、やはり雇用や物価の動向次第、期待インフレ率にも注目。
9月以降の利上げペースを探る上で8月26日のパウエルFRB議長の講演に市場の注目が集まる
米カンザスシティー地区連銀は毎年、ワイオミング州ジャクソンホールで経済シンポジウムを開催しています。通称「ジャクソンホール会議」と呼ばれるこのシンポジウムでは、各国中央銀行のトップが集い、学術的な議論が交わされます。今年のジャクソンホール会議は、「経済と政策への制約を再評価する」をテーマに、8月25日から27日まで開催され、26日には、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演が予定されています。
なお、歴代のFRB議長は、ジャクソンホール会議の講演で、政策方針に関するメッセージを発信してきた経緯があります。最近の講演では、2021年に量的緩和の縮小(テーパリング)の年内開始が示唆され、2020年には金融政策の新たな指針が発表されています。今回は、9月以降の利上げペースに関する手掛かりが示される公算が大きく、市場の注目が集まっています。
パウエル議長は、利上げ継続が適切、ペースはデータ次第など、従来通りの見解を示すとみられる
そこで、以下、パウエル議長は今回、どのようなメッセージを発信するかについて考えてみます。まず、最近のパウエル議長の発言を振り返ると、7月27日の米連邦公開市場委員会(FOMC)終了後の記者会見で、「継続的な利上げが適切と考えるが、ペースは今後の指標や経済見通し次第」、「金融政策のスタンスがさらに引き締まるにつれ、経済やインフレへの影響を評価しつつ、利上げペースを緩めていくことが適切」と述べています。
次に、8月17日に公表された7月FOMCの議事要旨をみると、7月27日のパウエル議長の発言は、FOMC参加者の考えであることが確認できます。以上を踏まえると、パウエル議長は今回の講演で、インフレ抑制のため利上げ継続は適切としつつ、利上げのペースはデータ次第で、利上げ効果浸透ならペース減速が、ある時点で適切になるという、従来通りの見解が示される公算が大きいと思われます。
その場合、9月以降の利上げペースは、やはり雇用や物価の動向次第、期待インフレ率にも注目
実際に、このような見解が示されれば、株価にはやや重しとなりますが、米国株はすでに先週金曜日から調整しており、事前の織り込みが進んでいるように見受けられます。なお、9月FOMCでの利上げ幅について、市場では50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)か75bpかで見方が分かれていますが、雇用や物価のデータ次第ということであれば(図表1)、今回のパウエル議長の講演だけで見方が定まることは難しいとみています。
また、8月5日付レポート「相次ぐFRB高官のタカ派発言の読み方」で解説した通り、期待インフレ率はFRBにとって重要な指標となっており、ジャクソンホール会議後の動きが注目されます(図表2)。
あくまで1つの目安ですが、期待インフレ率の安定が続けば、9月FOMCでの利上げ幅は50bp、その後の利上げ幅は縮小に向かう可能性が高まり、上昇が続けば、9月は75bp、その後も大幅利上げ継続となる可能性が高まると考えています。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米ジャクソンホール会議直前のチェックポイント【ストラテジストが解説】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト