●4-6月期は増収増益の着地、増益率は製造業が低調な一方、非製造業はかなり良好な数字に。
●今年度予想は小幅に上方修正、増収、営業利益は増益、経常利益と純利益は減益の見通し。
●利益予想などが良好な業種は選好も日本株全体の上昇には業績予想の更なる上方修正待ち。
4-6月期は増収増益の着地、増益率は製造業が低調な一方、非製造業はかなり良好な数字に
東証株価指数(TOPIX)を構成する3月期決算企業(金融とソフトバンクグループを除く)のうち、8月19日時点までに4-6月期決算発表を終えた企業は1,300社を超えました。決算発表の進捗率は、企業数ベースで99%を超え、決算発表はほぼ終了したといえます。そこで、今回のレポートでは、集計データに基づき、4-6月期の実績と今年度の業績予想の傾向を確認します。
はじめに、4-6月期の実績からみていくと、前年同期比で売上高は15.4%増、営業利益は2.4%増、経常利益は17.3%増、純利益は19.4%増の増収増益となりました(図表1)。
利益の増加率は、製造業が低調な一方、非製造業は30%~40%台と良好です。純利益について、製造業では、電気機器や輸送用機器のマイナス寄与度が大きく、非製造業では、卸売業や海運業、陸運業のプラス寄与度が大きくなっています。
今年度予想は小幅に上方修正、増収、営業利益は増益、経常利益と純利益は減益の見通し
次に、企業による2022年度の業績予想について確認します。業績予想を公表している企業について、入手できるデータに基づき集計したところ、前年度比で売上高は10.8%増、営業利益は5.6%増、経常利益は0.7%減、純利益は1.3%減という見通しが示されました(図表2)。業績予想の改定率は、順に+1.3%、+1.1%、+3.1%、+3.3%と、小幅ながらも全体として上方修正の動きがみられます。
以下、業種別の動きを少し詳しくみていくと、2022年度の純利益について、2ケタ以上の増益率を予想しているのは、鉱業、陸運業、空運業、ゴム製品、医薬品、繊維製品、精密機器です。また、同じく2022年度の純利益について、予想の改定率が2ケタ以上となったのは、鉱業、海運業、石油・石炭製品で、5%以上となったのは、非鉄金属、陸運業、金属製品、精密機器、倉庫・運輸関連業でした。
利益予想などが良好な業種は選好も日本株全体の上昇には業績予想の更なる上方修正待ち
実際の株価の動きに目を向けると、決算発表が本格化する前の7月22日から、決算発表がほぼ終了した8月19日までの期間、日経平均株価は3.6%、TOPIXは2.0%、それぞれ上昇しました。同期間において、上昇率の高い主な業種は、非鉄金属(8.0%)、鉱業(7.2%)、空運業(6.7%)、石油・石炭製品(6.0%)、卸売業(5.6%)、陸運業(5.5%)、精密機器(5.1%)などです。
以上より、4-6月期の業績が良好で、2022年度の純利益について高い伸びが予想され、今回の改定率が大きかった業種は、素直に選好されていることが分かります。ただ、企業自身の業績予想は、市場予想に届いておらず、両者の乖離率は、売上高が-0.2%、営業利益は-5.6%、経常利益は-7.1%、純利益は-6.5%となっています。日本株全体の上昇基調が一段と強まるには、企業による業績予想の更なる上方修正が待たれます。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2022年4-6月期の国内企業決算を終えてみえてきたこと【ストラテジストが解説】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト