口腔ケアの徹底は、口臭や感染症の防止にも役立つ
スウェーデンでは、老人介護施設の見学に行ったときにも驚きがありました。
施設に入ったときに、ツアーを企画してくれた先生から「何か違うと思いませんか?」と言われたのですが、それは「におわない」ということでした。
日本で高齢者の口腔ケアのお手伝いに行くと、口の中まで管理がされていない人がほとんどで、歯周病が多く、口臭も強くなってしまうことを感じていました。しかし、スウェーデンの施設では高齢者に口臭がありません。これは予防意識が高く、高齢者も口の中の管理が徹底されているからなのです。
歯周病は誤嚥性肺炎(食物や唾液が誤って肺に入ってしまい起こる肺炎)を誘発することも分かっているので、老人介護施設で口の中の管理を徹底することは、誤嚥性肺炎での死亡率を下げることにも役立っています。口の中をきれいにしておくことは、細菌の繁殖を抑え、さまざまな感染症を防止するためにとても大事なのです。
若いうちから予防意識を高めることが重要
健康や医療に関する情報を入手、理解、評価、活用するための能力を「ヘルスリテラシー」といいます。体に不調を感じたときに、ネットや本などで病気について調べたことがある人は多いと思います。しかし、信頼できる情報が何かを見極めないと、間違った治療法を選んで病気が悪化してしまう可能性もあるのです。
実は日本人のヘルスリテラシーのスコアが諸外国に比べて低いことが明らかとなっています。ヘルスリテラシーのサイトを運営している中山和弘氏(聖路加国際大学看護情報学)によると、日本でヘルスリテラシーが低いと考えられる背景として「プライマリー・ケア(身近にあって何でも相談できるケア)の不十分さ」「インターネットを含めた情報の入手先の問題」「子供のころからの健康教育体制」などが挙げられています。
ヘルスリテラシーの低さは、予防弱者を増やすことにもつながります。高齢化に伴う医療費増大についてはもちろん、高齢者の場合には、手術を受けられるだけの体力がなかったり、通院自体が困難になったりと、現実的な問題が多くあります。かからなくて済む病気なら、かからないに越したことはないのです。若いうちから予防意識を高めることが、健康な老後を過ごすために重要だと私は考えています。
金子 泰英
医療法人KANEKO DENTAL OFFICE 理事長・院長