「歯の健康維持」は「健康寿命の延伸」につながる
歯科の側面から見ても日本と海外の予防意識の差は明確です。現在、歯科医療が世界一発展しているスウェーデンでは、寝たきり高齢者の数が少なく、一方で日本はその3倍であるといわれています。また、高齢者の歯の残存数にも大きな隔たりがあります。
歯科への通院目的を調査した結果を見ると、スウェーデンとアメリカは予防目的が圧倒的に多く、対照的に、日本では虫歯治療が主流であることが分かります。いかに日本人が普段から歯に気を使わないかが見て取れます。
歯を失うのは決して年齢のせいだけではありません。一人ひとりが歯に対して重要性を理解し、日々の予防を徹底することにより歯の寿命は確実に延ばすことができるのです。
スウェーデンでは、地域ごとにホームドクターが決まっています。1年間のうちに1~2回は定期健診、クリーニングを受けないと保険が下りない制度になっているので、国民全体が虫歯や歯周病になりづらい環境になっているのです。これにより国民の歯は年を取っても残るようになりました。歯周病は誤嚥(ごえん)性肺炎や脳梗塞、心筋梗塞、糖尿病といった疾病の原因となったり、悪化の要因になったりすることがあります。歯科分野でのこうした取り組みが、健康寿命の延伸にもつながるのです。
高齢化に伴う社会保障費の増大、それを補うための増税など、議論が絶えない昨今ですが、私は、まずなによりも「予防を重視し、病気にならないようにする」ことが第一だと考えています。日本でも国民一人ひとりが歯の重要性を知り、定期健診、クリーニングなどの予防を率先して行うことが、健康寿命を延ばすカギになります。