健康な歯を必要以上に削る“悪しき習慣”も…保険診療の「限界」【歯科医師が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

健康寿命を延ばすには、どうすればよいのか。その一つは、自由診療で予防歯科を定期的に受診することです。歯と体の健康には密接な関係があり、歯の疾患は「口の中の問題」に留まりません。たとえば歯周病は、誤嚥性肺炎、心疾患、感染症などの全身疾患に悪影響を及ぼすことが分かっています。歯科医師の金子泰英氏(医療法人KANEKO DENTAL OFFICE 理事長・院長)が、予防歯科の重要性を解説します。

受診したくてもできない「医療難民」にならないために

日本は少子高齢化が進み、このままいけば医療難民が増えることが予想されます。特に地方は、病院にかかりたくても診る医師が減っていくため、かかることができない人が増えてしまいます。

 

それならば、逆の発想で病気にならない体づくりをすればいいのです。そのためには、「食事ができない歯」ではダメだと私は考えています。

 

一般的に、よく噛めなければ、おかゆや麺類など軟らかい食事に偏り、しっかり噛まなければならない野菜や肉類などは敬遠しがちになります。噛まないことで唾液量が十分に分泌しないため味覚も低下し、さらに飲み込みも悪くなります。おいしく感じられなくなることで「食べたくない」という気持ちが膨らみ、食事がつまらなくなり、低栄養へとつながっていくのです。低栄養で身体活動量も減れば、筋量が失われ、骨がもろくなり、サルコペニア(筋肉量が減少して筋力低下や、身体機能低下をきたした状態)も起こります。

 

そして、ひとたび寝たきりで要介護になると、そこから健康状態を戻すのは難しくなってしまうのです。この負のサイクルに陥る前に、しっかりと歯の噛み合わせを治しておくことが重要です。認知症の予防にもなります。

 

医療難民にならないためには、高齢になったときに無駄な治療をしないと決めておくことも一つの方法だと思います。私は70歳になってがんの宣告をされたら、手術や抗がん剤などの標準治療はしないつもりです。代替治療のみ行って、自然治癒力を高め、生活に支障が出る治療はせず、がんを大きくしないよう努めます。

 

食べられなくなったり、病院で管につながれたりしたまま長期間入院して死ぬといったことを避けるために、今どうすればいいのかといえば、予防しかありません。そしてその基本が、これまでお話ししてきたとおり歯の病気予防であり、信頼できるかかりつけ医を見つけて、二人三脚で健康を維持していくことなのです。

治療を「病院まかせ」にしない。病院依存からの脱却

先進国で安い金額で良質の保険医療を受けられるのは日本だけです。しかし、国の医療費は逼迫しており、今後、国民の負担金が増えていくのは明らかです。無駄な薬の乱用も医療費を圧迫します。

 

歯科では患者から「痛い」と言われると、診療報酬を稼ぐために必要がないところも削ってしまうといった悪い習慣があります。もし、歯を削るときに「料金は10万円です」と言っていれば、患者は「ちょっと待ってください。本当に虫歯はありますか?」となるはずです。しかし、保険診療だと大きな金額ではないので、患者も歯科医が言うことを疑問なく受け入れてしまうのが現状です。

 

それもまた医療費を圧迫する原因の一つだと思うのです。無駄な治療をなくし、本当に必要な治療にお金をかけるためにも、患者の病院まかせの体質を改めていくことが必要だと思います。

 

特に整形外科は、多くの高齢者が慢性的な腰痛やひざ痛の治療に通っています。「もう年だから治らないし、痛みがひどくならないように通っている」という人も多く、病院の待合室が高齢者の井戸端会議の場になっているところもあります。保険診療だとどこも治療内容は大差なく、安く治療が受けられますが、病院側は診療報酬を稼ぐため、たくさん患者に来てもらわないといけません。そして、長い待ち時間と短い治療となり、整形外科で慢性的なひざ痛や腰痛が劇的によくなったという声はあまり聞かれません。私からみれば、こういった患者は予防弱者にほかならないのです。

 

腕のいい整体師や理学療法士による治療は、ほとんどが自由診療ですが、体のことをよく分かっていて、見事に治療してくれます。病院依存から脱却し、自由診療という選択肢を増やすことが、真の予防と健康に導いてくれる方法だと考えています。

予防歯科は「健康な未来」への投資

自由診療で予防歯科を定期的に受診することは、歯と体の健康を整えることであり、健康寿命を延ばす方法の一つです。

 

そのため、予防歯科に通うことは、健康な未来への投資といえます。「仕事ができる人はジムで体を鍛えている」といった話をよく聞きますが、健康に対する意識が高い人は、仕事も遊びもすべての面において高いパフォーマンスを発揮していると思います。

 

意識が高いといえば、ホリエモンこと堀江貴文さんも最近は健康に関する書籍を出されています。そこで言われているのが、「いま『健康』は、究極の資産である」という言葉です。予防医療に関する書籍なのですが、やはり、堀江さんも健康に対する投資は重要だと話しています。

 

仕事が忙しいと歯磨きをおろそかにしている方は、後悔しないよう気をつけてください。

 

繰り返しになりますが、健康寿命を延ばすには、口内環境を整えることが重要だからです。

 

そして、健康のために体の免疫を上げたり、がんの予防をしたりするために必要なこと保険診療では行えません。

 

なかには「歯の治療は保険診療で行い、高濃度ビタミンC点滴療法を自由診療で行えばいいじゃないか」と言う人がいます。しかし、日本では保険診療と自由診療の混合診療が禁止されており、保険治療と同時に自由診療をやると歯科医師が罰せられます。

 

そのため私は保険診療をやめて、自由診療にしたのです。言い換えると、歯科治療とは歯だけのことなのか、歯も含めた体のケアのことなのかという選択で、後者を採ったのです。

 

保険診療でも予防を謳(うた)っている歯科はありますが、それは歯周病の菌をなくすという歯だけの治療で、高濃度ビタミンCを入れて免疫力を上げて回復を良くするといったことは入っていません。予防歯科の適用範囲を広げるなら、自由診療を選択するのがベストだといえるのです。

予防歯科では粘膜や舌、噛み合わせもチェックする

予防歯科というと、歯のクリーニングを思い浮かべる人が多いと思いますが、ちゃんとした予防というのは、粘膜や舌、噛み合わせもしっかりと診ることから始まります。

 

新型コロナ対策でも、口の中をきれいにするのは歯科にいわせれば当たり前の話であり、ウイルスは舌の奥のほうに付くので、舌みがきも大切です。SARSウイルスの重篤化を防ぐ方法として、口腔ケアが有効というデータはすでに出ているので、今後、新型コロナウイルスへの有効なデータも出てくるのではないかと考えられます。

 

口腔ケアをしたグループのインフルエンザ発症数は約10分の1に抑えられたというデータもあります【図表】。歯科医が歯科衛生士に、そういったことを教えて勉強してもらい、患者に伝えてもらうことも大切です。

 

出典:日本歯科医学会誌(2006)「健康な心と身体は口腔から―高齢者呼吸器感染予防の口腔ケア」より作成
【図表】口腔ケアとインフルエンザ発症の関係 出典:日本歯科医学会誌(2006)「健康な心と身体は口腔から―高齢者呼吸器感染予防の口腔ケア」より作成
 

 

一方で保険診療の場合、一人の患者にかけられる時間が限られるので、粘膜や舌まで診るのは難しいかもしれません。自由診療での予防歯科の丁寧な診察・治療を、ぜひ一度体験してください。

 

 

金子 泰英

医療法人KANEKO DENTAL OFFICE 理事長・院長

 

 

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    医療法人KANEKO DENTAL OFFICE 理事長・院長

    1971年栃木県生まれ。
    1995年に日本大学歯学部を卒業し、3年後にKANEKO DENTALOFFICEを開業。2015年に宇都宮に移転すると同時に法人化。
    アメリカ、スウェーデン、ドイツなどで歯科治療の研鑽を積み、保険診療が当たり前になっている日本の医療制度に疑問を感じた。
    より高度な治療をするためには自由診療での治療が必須だと考え、現在は完全自由診療で歯科治療に従事している。
    また、5年前からはカンボジアでボランティア活動を行っており、予防医療の重要性を再認識するに至る。
    前著に『あなたの歯のかみあわせのコンプレックスを幸せにかえてみませんか?』(海苑社)がある。

    著者紹介

    連載予防弱者…知らぬ間に不健康に陥る日本人

    予防弱者 知らぬ間に不健康に陥る日本人

    予防弱者 知らぬ間に不健康に陥る日本人

    金子 泰英

    幻冬舎メディアコンサルティング

    「病気になったら治す」では、気づかぬうちに病魔が進行していることも…。 病気は「治す」時代から「予防する」時代へ! 医療技術の進歩がめざましい今、欧米を中心とした先進国では「予防医学」が着目されるようになって…

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