超高齢社会で維持できるのか?国民皆保険制度のリスク
日本では国民皆保険制度によって、誰もが保険診療を受けられます。
国民皆保険制度のメリットは、なんといっても治療費が安いということです。これだけ高度な治療を安く受けられる国は、世界でもそう多くありません。
公的医療保険制度がないアメリカでは、MRIやCTを撮るだけでも何十万とお金がかかります。簡単に病院にかかることができないことは、新型コロナウイルスでの死亡者が激増した要因にもなりました。アメリカは2020年3月中旬にニューヨーク州で感染爆発が起こって以降各地に飛び火し、3月末には感染者数は世界一となりました。死亡者数は、4月にはベトナム戦争、6月には第一次世界大戦のアメリカの戦死者数を上回り、2021年現在、なお感染者数は増え続けています。
この感染者数増大は、医療制度の問題として、アメリカの医療保険制度がこのようなパンデミックに有効に対処できなかったということが指摘されています(「アステイオン93号」新しい「アメリカの世紀」内論考「アメリカニズムと医療保険制度」より)。
アメリカでは国民皆保険制度が存在せず、高齢者、障害者、低所得者、低所得の子どもを対象にした保険制度のみが存在します。それ以外の人は民間保険に加入していますが、保険料が高額なため、国民の6人に1人は無保険者となっています。そのため、病気になってもお金がなくて病院に通えない人が多く、やむを得ず手術や入院をした場合は高額な医療費を払えずに破産してしまう人もいるのです。
日本の国民皆保険制度は、1961年にスタートしました。国民皆保険制度は、相互扶助の精神に基づき、病気やけがに備えてあらかじめお金(保険料)を出し合い、実際に医療を受けたときに、医療費の支払いに充てる仕組みです。患者はかかった医療費の原則1~3割の負担で済み、残りは自分が加入する医療保険から支払われます(保険給付)。
この制度は、いつでも、誰でも、平等に医療を受けることができるすばらしいものですが、近年はこの制度が維持できるかどうかが疑問視されるようになってきました。
超高齢社会において社会保障費が膨れ上がっているため、医療費の自己負担割合が今のままでは社会保障制度が破綻してしまう可能性があります。そのため、今後医療費の自己負担割合が高くなったり、社会保険料が値上げされたりすることが予測されるのです。