(※写真はイメージです/PIXTA)

日本ではあまり普及していない「セカンドオピニオン」について、歯科医師の金子泰英氏(医療法人KANEKO DENTAL OFFICE 理事長・院長)が解説します。

独断で転院するより、まずは「セカンドオピニオン」

「セカンドオピニオンを受ける」と言いづらく、担当医には黙ってほかの病院に行き、治療法を探る人もいます。しかし、セカンドオピニオンのメリットは、自分の診断データをもちだせるという点です。血液検査の結果やレントゲン写真などは、勝手にもちだすことはできませんが、医師にセカンドオピニオンを受ける旨を伝えると提供してもらえます。

 

別の病院で新たに検査をすると、時間もかかりますし、CTによる被ばくの頻度が増えることにもなります。そういった面からも、よほどダメな医師でない限り、いきなり転院するより、まずはセカンドオピニオンを受けたほうがよいと思います。

欧米ではセカンドオピニオンは当たり前

セカンドオピニオンは、欧米ではかなり前から普及しています。

 

日本でセカンドオピニオンが進むきっかけになったのは、2004年、「独立行政法人国立病院機構中期計画」のなかで、患者の目線に立った医療を提供するための施策の一つとして、「セカンドオピニオン制度の実施」が明記されたことです。その後、大きな病院では「セカンドオピニオン外来」を設置する動きが増えてきましたが、欧米の積極的な姿勢と比べるとまだまだ日本では普及に至っていないというのが現状です(図表1・2)。

 

[図表1]全国47都道府県セカンドオピニオン実施率ランキング

 

[図表2]セカンドオピニオンの認知度

 

アメリカでは診療が終わったあとに、医師から「セカンドオピニオンを受けますか?」と患者に確認することも多いそうです。国民皆保険制度がない国では、治療に大きなお金がかかるので、患者側も治療法を真剣に選択する意識が強いのです。日本は国民皆保険制度があるため、「保険診療をやっているところはすべて同じ医療を受けられる」と考えている人も少なくありません。

 

また、アメリカでは、なんでも診る開業医は少なく、専門医が多いのも特徴です。歯科に関しても、矯正、インプラント、歯周病といった具合に、専門医が分かれています。そのため、専門外の治療が必要になったときに、別の病院を紹介するというケースが当たり前になっていて、複数の病院を行き来するのが多いことからも、セカンドオピニオンを希望しやすい土壌ができています。

 

日本の開業医は幅広い分野を診ることが多いですが、一人の医師の診断だけでは不十分な場合もあります。セカンドオピニオンを活用することで、もっとよい治療法が見つかったり、大きな病気の発見につながったりすることもあるので、セカンドオピニオンは“真の予防”のための第一歩といえるのです。

歯科におけるセカンドオピニオンの例

歯科でセカンドオピニオンを受ける方は、次のような理由が多いです。

 

●抜歯と言われたが本当に抜歯が必要か

●痛みや腫れが治らない

●治療後、噛み合わせに違和感がある

●入れ歯かインプラントかで迷っている

●入れ歯が合わない

●歯列矯正の方法を検討している

 

私のオフィスでも、セカンドオピニオンを求めてくるケースでは、「痛いのが治らない」「腫れているのが治らない」といった患者が目立ちます。

 

痛みの場合、歯が原因の歯原性歯痛と、歯が原因でない非歯原性歯痛があります。歯が原因ではない場合は、当然ながら歯の治療をしても治りません。

 

よくあるのが、「虫歯の治療をされたけれど、そことは別の上の奥歯の痛みがおさまらない」という方です。レントゲンを撮ると虫歯はなく、鼻の空洞の部分が真っ白く写っています。そのため、「最近、風邪をひきましたか?」と聞くと、「はい」とおっしゃいます。

 

実は、風邪による副鼻腔炎が原因で上あごの奥歯に痛みが生じることは多いのです。そのため、私のところでは何も治療をせず、「1週間ぐらいすれば、何もしなくても治りますよ」と伝えて、帰っていただきました。

 

副鼻腔炎がひどい場合は、耳鼻咽喉科に行かれることをおすすめしています。

 

非歯原性ですと、副鼻腔炎を起こしていて、噛んだときに歯が痛くなるというケースはよくあります。しかし、保険診療の歯科の場合、何かしらの治療をしないと診療報酬が得られないので、本来は治療が必要ない歯を治療することもあるのかもしれません。

 

歯の治療をして痛みがおさまらない場合は、ほかの病気も疑い、セカンドオピニオンを受けることをおすすめします。

セカンドオピニオンには自由診療ならではの「利点」も

私のオフィスにセカンドオピニオンに来られた患者が口をそろえて言うことは、「こんなに話を聞いてもらったの初めて」です。

 

保険診療の場合、経営上どうしてもたくさんの患者をさばかなければいけないので、カウンセリングに30分~1時間かけていると赤字になってしまいます。次の患者をものすごく待たせるわけにもいきません。そのため、大きな病院では、専門のコーディネーターを雇用して、そこでまずカウンセリングをするという仕組みをつくらないと、カウンセリング時間をたっぷり取ることはできないと考えられます。

 

患者から話を引き出すためにも、やはりある程度の時間は必要です。医師の前で緊張して、思っていることと違うことを言ってしまう患者もいますし、伝えたかったことを忘れてしまう人もいるので、医師がうまく話を引き出さないといけません。

 

私のオフィスのチーフは話を聞きだすのが上手で、患者からいろいろな情報を聞き出してくれます。それによって医師の治療がスムーズに進められます。そのためには、カウンセリングは5分くらいの短い時間では難しいですし、やはり時間をかけてじっくり話をすることが本来のあるべき医療だと思います。

ただし、ドクターショッピングに陥らないよう要注意

私は患者がセカンドオピニオンを受けることに大賛成ですが、セカンドオピニオンとドクターショッピングは違います。ドクターショッピングとは、自分の気に入った商品を探してあちこちの店に立ち寄るように、自分がしてほしい治療法、自分にとって希望がもてる意見を述べてくれる医師と出会うまで、いろいろな病院を受診することを指します。

 

特にがんなどの深刻な病気では、「これで治る」と言われて、効果がはっきりしていない高額な治療法を選択してしまうこともあります。耳鳴りなどの治療法が確立していない慢性的な病気で、ドクターショッピングを続ける人もいます。また、「見た目を変えたい」という悩みに応える美容整形では、仕上がりに満足できず、整形を繰り返す人も少なくありません。こういったドクターショッピングでは、治療の効果がなかなか得られないので、“真の治療”はできません。

 

ドクターショッピングを避けるには、医師とのコミュニケーションと信頼関係が大切です。話を聞いて分からなかったことや疑問点は素直に医師に伝えて、きちんと解消するようにしてください。また、医療関連のサイトや書籍などをチェックし、日頃から病気に対する正しい知識を身につけておくことも、ドクターショッピングに陥らないためには必要です。

 

 

金子 泰英

医療法人KANEKO DENTAL OFFICE 理事長・院長

 

 

予防弱者 知らぬ間に不健康に陥る日本人

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金子 泰英

幻冬舎メディアコンサルティング

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